国分坂ブログ

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改正民法!相続人以外の親族に「特別寄与料請求権」が認められることになりました~!

皆様、こんにちは。国分坂です~!

すみません、ブログ、長らくさぼっておりました!

いや、私、基本的には「お金はないけど時間だけはある」人間なのですが、年に一度、6月中旬から7月上旬までだけは、忙しくガシガシ仕事しているんですね。

この頃は会社の定時総会時期なので、総会開催後の登記手続の御依頼が、ガンガンくる時期なのです。

 

「毎月こんな具合で仕事が来たらなあ、人生いろいろと違うんだろうなあ」なぁんて、思ったりしながら頑張っている時期なんですね。

そのため、すみません、ブログの更新が全くできませんでした!

謹んで、お詫び申し上げます~!

 

さて、仕事のラッシュもひと段落してしまい、日常運転に戻りつつありますので、ブログを更新させて頂きます!

今回は、つい先日、2019年7月1日から施行された「改正民法」の一部のお話です。

 

題して、「相続人以外の親族に、特別寄与料請求権が認められることになりました!」です!

 

 

特別寄与料請求権とは?

最初に「特別寄与料請求権」についてご説明しますね。

 

7月1日改正前からも、「寄与分」という制度はありました(改正後も存続してます)。

「寄与分」とは、遺産分割手続のなかで、相続人が被相続人(:亡くなった方)の財産の維持や増加のため、労務の提供などで特別な寄与をして貢献した場合に、その相続人に特に付加される相続分のことをいうんです。

たとえば、父の子Aが、父が行う事業を長年手伝って、その事業拡大に貢献したような場合に、Aには寄与分が認められる可能性がある、といった具合です。Aに寄与分が認められた場合、Aは他の相続人よりも寄与分の分だけ相続財産を多く取得できるのです。

 

ところが、この「寄与分」は「相続人」にのみ認められる制度です。

そう、「相続人にのみ認められる」という点に、問題があったのです。

 

たとえば、母甲の子Aの妻Bが、年老いた義母甲の介護を長年行っていたというような場合、甲の死後の遺産分割において、相続人ではないBには、甲の相続に対する寄与分は認められないということになっていました。(このような場合に「Bの夫のAに便宜上寄与分を認める」という裁判例はありました。しかし、B自身には、寄与分は認められませんでした。)

これに関しては、「不公平感が強い」と以前から批判がなされていました。

 

そして今回、「相続人以外の親族」に対しても、「寄与分」のような権利を認めよう、ということになったのです。

それが、「相続人以外の親族」の「特別寄与料請求権」なのです。

 

特別寄与料請求権の要件

特別寄与料請求権が認められるためには、次の3つの要件を満たす必要があります。

 

①被相続人の親族であること

②被相続人に対して無償で療養看護、その他の労務を提供したこと

③上記②により、被相続人の財産が維持され、または被相続人の財産が増加したこと

 

順に見ていきましょう。

 

①被相続人の「親族」であること

親族とは、配偶者、または6親等内の血族、3親等内の姻族をいいます(民法725条)。

たとえば、被相続人の配偶者と子供は相続人ですが、「子供の配偶者」や、「子供の子供(つまり被相続人の孫)」などが「親族」に該当します。

 

②被相続人に対して「無償」で療養看護、その他の「労務を提供」したこと

ポイントは2点です。「無償」と「労務の提供」です。

 

有償でした行為は、特別の寄与とはみなされず、特別寄与料請求権は発生しません。

たとえば、被相続人の療養看護を長年していたとしても、それに対する対価を得ていた場合は、特別寄与料請求権は発生しません。

 

次のポイントが「労務の提供」です。

たとえば、被相続人を実際に介護していた場合(:労務の提供)には特別寄与料請求権が発生し得ることになるのですが、被相続人の介護費用を負担するなど、「金銭出資等の財産上の給付」をしていた場合は、特別寄与料請求権が発生しない、と条文上解釈されることになります。

 

③要件②により、被相続人の財産が維持され、または被相続人の財産が増加したこと

たとえば、被相続人を介護したことで、結果として介護費用が軽減され、その分だけ被相続人の財産が維持された、といったケースが考えられます。

 

特別寄与料請求権は金銭請求権

特別寄与料請求権は、相続人に対する「金銭請求権」となります。

特別寄与として認められる分の金銭を、相続人に対して請求できます。

たとえば、被相続人を介護したことで、結果として介護費用が軽減され、その分だけ被相続人の財産が維持された、といったケースでは、軽減された介護費用相当額が、特別寄与料請求権として認められるのではないでしょうか。

 

なお、特別寄与料請求権は「金銭請求権」ですから、被相続人の遺産そのものを請求する権利はありません。特別寄与料請求権が認められる場合でも「被相続人の遺産中にある特定の動産・不動産を渡して欲しい」という請求はできない、ということです。

また、特別寄与料請求権は「相続人に対する金銭請求権」であるため、特別寄与料請求権が認められた親族であっても、遺産分割協議に参加する権利はありません。

 

特別寄与料請求権の行使方法

前述のとおり、特別寄与料請求権は「相続人」に対して請求することになります。

特別の寄与としての労務提供の内容を示し、それに対する金銭評価の資料を提示するなどして、相続人から金銭を支払ってもらうことになります。

しかし、相続人が特別寄与料請求権を認めない場合や、その金額について争いが生じたような場合には、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、判断・処分を求めることができます。

 

特別寄与料請求権の行使期間

特別寄与料請求権は「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6カ月」、または「(相続開始を知らなくても)相続の開始の時から1年」を経過したときには、消滅してしまいます。

 

非常に短い期間です。

 

被相続人の葬儀、法要、相続に関する登記手続や税務手続、その他諸々の手続をしていると、半年なんてあっという間に来てしまいます。

 

特別寄与料請求権を行使する場合は、被相続人の相続開始後、なるべくすぐに行使することが重要です。

そして、請求権を行使するに際しては、なるべく内容証明郵便(配達証明付)を活用し、「相続開始後6カ月以内に権利行使した」ということを証明できるようにしておきましょう。

 

最後に

今回の民法(相続法)改正では、世相を反映し、いろいろな規定が創設されました。

この「特別寄与料請求権」もその一つです。

むかしは「長男のお嫁さんが親の面倒を見るのは当たり前」なんてことが、さも当然のごとく吹聴されていたりしましたが、もちろん、現代では採用されない考えですよね。

長男も次男も、夫も妻も関係なく、みんなで支え合ってやっていくべきだ、というのが親族間におけるルールといえるでしょう。

 

そしてこの「特別寄与料請求権」は、頑張ってくれた親族に対し「感謝の意を具体化したもの」と捉えることができそうです。

 

もっとも、「親族間の扶養」を「金銭化」することに、嫌悪感をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。「親族同士、助け合うことは当然であり、介護等して当然」とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。そのような方が特別寄与料請求権を行使しないことは、もちろん全く問題ありません。

しかし、自らは介護等をせず、他の親族が介護してくれた際に「親族同士、助け合うことは当然であり、介護等して当然」などと考えるのであれば、それは自省すべきなのでしょう。

 

「自分も介護しなければならなかったのに、自分は出来なかった。本当に申し訳ない。まるで埋め合わせにはならないかもしれないけど、せめて金銭だけでも受け取っては頂けませんか」という思考こそが、おそらく本来だと思うのですが、どうでしょう。

 

そう、本来であれば「お金が欲しくて介護したわけではない」であろう親族に、このような請求権を行使させてしまう、ということは酷な話なのです。

請求権を行使することで、「お金が欲しかったの?」と思われてしまうことは、非常に嫌なことであるはずだからです。

 

でも、それでもこのような制度が創設されたのは、「頑張ってくれていた親族が評価されることもなく蔑ろにされていた」ということが、少なからずあったから、なのだと思います。

 

私の個人的な意見としては、この「特別寄与料請求権」という制度ができたことにより、今一度、親族同士が互いに慮り、互いを慈しんで、このような権利を行使せずとも納得できる人間関係を構築していければなあ、と思っています。

しかし、そうはいかないという場合には、「当然の権利」として、粛々と請求権を行使して頂き、「自己の頑張りを葬り去ることなく形にして頂きたい」、と思うのです。

正直者が損をする、そんな社会にはしたくないのですね。

 

というわけで、以上、「改正民法!相続人以外の親族に「特別寄与料請求権」が認められることになりました!」でした!

ここまでお付き合いを頂きまして、誠にありがとうございました!