国分坂ブログ

「歩くこと」「考えること」が好きな、国分坂です!

遺言書を「絶対に」書かなければならない人! お節介ながらも、発表させて頂きます!

こんにちは。国分坂です。

 

基本的に遺言書は書くべきだと思います

まず最初にお伝え差し上げたいのですが、「遺言書」は基本的に「書くべき相手が居るのであれば、みなさん是非、書いた方が良いでしょう」と私は思っているんです。

遺言書は「法的な特殊効力を発生させる文書」でありますが、また、「残されるひとへの最後のお手紙」という側面もあるのだと思います。

 

自分が逝ってしまった後に残されるひとに、「あれこれ心配事があるけど、このように対処してね」とか、「大切なものはこれとこれがあるけど、このように分け合って使ったらいいと思うよ」とか、「まあ、人生いろいろとあったけど、お陰様でとっても楽しかったですよ。本当に、本当に、ありがとう!」といった言葉を、最後の最後に残していくもの、それが遺言書ですよね。

「法的な効力を発生させる部分」と「思い出や感謝の言葉などを記載する部分(「付言」などと言われますね)」、この両方で遺言書は成立しています。

どちらもとっても重要なので、仮に「別段、法的問題はないから」と考えていても、手紙としての側面から遺言書を書いておく、という意味はあると思います。

また、逝ってしまう自分は「別段、法的問題はない」と思っていたとしても、残されるひとは、なんとなく不安に感じているかもしれません。

そこで、残される相手を安心させるためにも、遺言書はできれば皆さん書いておいた方が良いでしょう、というのが私の一般論としての意見なのです。

 

遺言書を「絶対に」書かなければならない方々

さて、ここからは、そんな「一般論としての意見」ではなく、かなり強硬に「絶対に書いてください!ダメですよ~!書かないと!」と強く強く主張したい方々へのメッセージになります。

 

ちょっと限定された立場の方々に対するメッセージになってしまいます為、その立場にいらっしゃる方には、息苦しい思いをさせてしまうかもしれません。

そうであれば大変申し訳ないのですが、でも我慢してお聞き頂ければと思います。

お節介で申し訳ないのですが・・

 

結婚されていて、お子さんがいらっしゃらない方、

絶対に、遺言書を書きましょう!

 

実は、平成28年12月19日に、ある最高裁判例が出されたのです。

その最高裁判例の要旨は、

「預貯金債権は、遺産分割の対象となる」

というものです。

この最高裁判例が出たとき、我々司法関係の人間や、銀行業界は驚愕しました。

今までの実務手続と180度異なる判決が出てしまった、と驚いたのです。

・・解説致しますね。

 

今までは、相続財産中に銀行等の「預貯金」があった場合、相続人は「自分の法定相続分の割合」を限度に、単独で、銀行から払い戻しを受けることが出来たんです。

たとえば、相続財産中に1000万円の預金があった場合で、相続人が妻と子供2人の場合、妻は法定相続分(2分の1)の割合、つまり500万円の払い戻しを、遺産分割協議をする前でも、単独で銀行に請求できました。

ところがです。

上記の最高裁判例が出てしまったことにより、この取り扱いががらりと変わってしまったのです。

 

上記最高裁判決後は、原則として遺産分割協議が成立する前は、共同相続人全員が共同して払い戻しを請求するか、遺産分割協議成立後に、その預貯金を取得した相続人が、単独で払い戻しを請求しなければならない、とされたのです。

 

つまりですね、相続財産中に1000万円の預金があった場合で、相続人が妻と子供2人の場合、遺産分割協議成立前には、従前できた妻単独による500万円の払い戻しが出来なくなってしまった、ということです。

妻と子供二人共同で払い戻し請求をするか、遺産分割協議が成立してから、遺産分割協議でその預貯金を取得した相続人が請求するか、ということになってしまったのです。

 

被相続人の葬儀代や病院費用などの債務の支払い、妻や扶養を受けていた子供の生活費など、早急にお金が必要になるケースに、とっても困りますよね?

ただ、相続人が「妻と子供」であれば、一般的には協力し合うことがしやすい関係にあると思われるので、まあなんとかなるかもしれません。

しかし、結婚をされていてお子さんがいない場合、一方配偶者が死亡した場合の相続人は、「配偶者と被相続人の両親」もしくは「配偶者と被相続人の兄弟姉妹」になりますよね?

 

「配偶者の両親」または「配偶者の兄弟姉妹」。如何ですか?特段仲が悪くなくとも、疎遠だったり、少し距離を感じたりすることが、多いのではないでしょうか?

「早急に遺産分割協議書に押印して、印鑑証明書と一緒に送って欲しい!」と、声を大にしてお願いできる間柄にありますでしょうか?

・・ちょっと、お願いしにくいなあ、という方が多いような気がします。

でも、先程の「最高裁判例」が出てしまいましたからね。

亡くなった配偶者の預貯金から生活費などを下ろそうとしたとき、銀行から「相続人全員で請求するか、遺産分割協議書を添付してください」と言われてしまったら、どうしましょうか?

このような事態を回避するのが、「遺言書」なんです!

配偶者が他方配偶者に対し、「全財産を相続させる」といった内容の遺言書を作成していれば、銀行に「相続人全員で請求するか、遺産分割協議書を添付してください」と言われても、その「遺言書」を見せることで、配偶者が単独で預貯金を下すことができるようになるのです。

 

なお、「結婚されていてお子さんがいらっしゃらないご家庭」のみならず、「子供はいるけど未成年者である」、という方も、是非遺言書を作成しておくべきでしょう。

未成年者のお子さんがいる場合に遺産分割協議をするときには、家庭裁判所へ未成年者のための「特別代理人」選任申立手続を経なければならない、といった煩雑な手続きが要求されてしまうからです。

ただ、この場合にも「遺言書」があれば、基本的に特別代理人の選任手続は不要になるのです。

 

なお、自筆証書遺言が作成しやすくなりましたので、よろしければ下記記事をご参照くださいね。

www.kokubunzaka.com

 

 

2019年7月1日民法改正(仮払い制度)

ところで、2019年7月1日から法律が改正され、相続財産中の預貯金について、仮払いをしてもらえる制度が始まることになりました。

遺産分割協議が成立する前に、生活費や被相続人の債務の支払いにお金が必要となる場合、「仮払い」をしてもらうための制度です。

この仮払い制度には2種類ありまして、1つは「家庭裁判所の仮払い制度」、もう1つは「民法による仮払い制度」です。

ごく簡単にご説明しますね。

「家庭裁判所の仮払い制度」は、手続きが煩雑で仮払い可能かどうかを家庭裁判所が判断することになりますが、場合によっては多額の仮払いをしてもらえる可能性がある、そんな制度です。

一方、「民法による仮払い制度」は、裁判所等への煩雑な手続きは不要ですが、仮払いされる金額に上限(銀行ごとに最高150万円)が設けられている制度です。

 

つまり、時間が掛かってでも多額の仮払いを請求したいときは「家庭裁判所の仮払い制度」を利用し、金額制限はあるけど簡易迅速に仮払いを求めたいときは「民法による仮払い制度」を利用する、という感じでしょうか。

 

万が一、亡くなった方が「遺言書」を作成することなく逝ってしまった場合には、この仮払い制度の利用を検討して頂くことになるでしょう。

 

最後に

たしかに「自分はまだまだ元気だから」「そんな必要はない」「そのうち書けばいいんじゃない」と、ついつい書かないのが「遺言書」ですよね。

でも、平成28年12月19日に出た最高裁判例により、このような態度は厳に慎むべし!ということになった、といえそうなんです。

ちゃんと遺言書を書いておかないと、残されたひとがとても困ったことになってしまう、そんな可能性がとっても高くなってしまったんですね。

 

もしも「さあ書こう!と思うと、あれこれ考えてしまい進まない」という場合には、まずは単純な遺言書(「全財産を妻●●に相続させる。」など)を書き上げてから、その後、バージョン2、バージョン3と新たな遺言書を書いていく、という手法でも良いかと思います。

遺言書は、何度も書き直すことが出来ますし、自筆証書遺言なら、特段費用も掛かりませんからね。(前回書いた遺言書と、今回書いた遺言書で矛盾する場合は、矛盾する範囲で、前回の遺言書が無効となります。)

よろしければ残される方のために、ちょっとお考えになってみては如何でしょうか?

 

もっとも私的には「遺言書は残される方への最後の手紙」というフレーズの方に、惹かれるものがありまして。

法的な内容も重要ですが、自分が逝った後に残される大切なひとに対し、出会ったときのこと、過ぎ去った日々のこと、嬉しかったこと、感謝の言葉などなど、最後の文章をしっかりと書き残す、そういう行為を大切にしたい、と思ったりしています。

 

人生は、いつか必ず終わる。

そのことを噛みしめながら、「遺言書」という一つの作品を、書き上げてみても良いのかもしれませんね。

 

というわけで、誠に僭越ながら、遺言書を「絶対に」書かなければならない人!を発表させて頂きました!

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!