国分坂ブログ

「歩くこと」「考えること」が好きな、国分坂です!

内容証明郵便の書き方と、送付に関する実務の「技」をお教えします!

【要約:内容証明郵便は「相手方が受け取ること」が肝心です。そのための方策の1つとして、相手方に「普通郵便」で解決に応じてほしい旨の通知を、内容証明郵便と同時もしくは先行して出すことをお勧めします!】

 

【この記事の対象(特に読んで欲しいひと):内容証明郵便を出したい人/紛争を抱えるおそれがある人/法律に興味がある人】

 

 

1.内容証明郵便(配達証明付)はどのようなときに使う?

内容証明郵便とは、郵便局において、発送する書面の内容(文面)を証明してくれる郵便のことをいいます。

たとえば、「契約の解除をしたい」という場合、一定の要件を満たした上で、「●年●月●日に解除する」といった「解除の意思表示」を相手方に伝える必要があります。

つまり、相手方に「解除の意思表示」が伝えられる(到達)ことで、解除の効力が発生するわけです。

 

ところが、もしも「解除」をめぐって、こちら側と相手方との言い分が食い違ってしまい、訴訟になったとしたら、どうなるでしょうか?

こちら側は「●年●月●日に解除する」という書面を送ったので、もう解除されている、

という意見を主張するのに対し、

相手方は、そのような書面は受け取っていないので、解除されていない、

と主張している、

そんなケースです。

 

この場合、訴訟においては、

「解除した」と主張する方(こちら側)が

・「●年●月●日に解除する」という意思表示をしたこと

・その意思表示が相手方に伝えられたこと(到達したこと)

を、証明しなければならない、とされています。

 

では、どうすれば証明できるでしょうか?

そうです、「内容証明郵便(配達証明付)」を利用するのです。

内容証明郵便であれば、送った文面が「●年●月●日に解除する」という文面であった、ということを証明できます。

また、配達証明付にすることで、郵便局が相手方に送達した日を証明してくれるため、その文面(意思表示)が相手方に伝えられたこと(到達したこと)を証明することができる、というわけです。

よって、解除したと主張するこちら側が、内容証明郵便(配達証明付)を提出すれば、裁判所は●年●月●日に解除された、ということを確認し、こちら側の主張が正しい、と認定してくれるのです。

 

訴訟を前提とする場合や、訴訟になる可能性がある場合には、ほぼ必ずと言っていいほど、この内容証明郵便(配達証明付)を相手に出すことになります。

それは、どうしてでしょうか。

 

多くの法的争いは、「このような法的な効力が生じている」「いや生じていない」というところで、争いになります。

「法的な効力が生じる」ためには、ほとんどの場合において、その効力を生じさせるための「意思表示」が「相手方に到達」する必要があります。

よって、その「意思表示」が「相手方に到達」したということを証明するために、内容証明郵便(配達記録付)を利用するのです。

だから、

訴訟を前提とする場合や、訴訟になる可能性がある場合には、ほぼ必ずと言っていいほど、この内容証明郵便(配達証明付)を相手に出すことになる、というわけです。
 

2.内容証明郵便の作成ルール

では、内容証明郵便を実際に作成するためのルールを確認しましょう。

内容証明郵便は、一行の字数、用紙1枚の行数などについて制約があります。

具体的に見てみましょう。

 

《字数と行数》

・縦書きの場合:

一行20字以内、1枚26行以内

 

・横書きの場合:

一行20字以内、1枚26行以内

または

一行26字以内、1枚20行以内

または

一行13字以内、1枚40行以内

 

一般的には「用紙縦置きの横書き」で、「一行20字以内、1枚26行以内」で書くことが多いのではないでしょうか。

 

「以内」ですので、同じか少ない分は構いません。

つまり、「一行20字以内、1枚26行以内」で書く場合は、

一行20字や19字(もしくはそれより少ない字)はOK、1行21字はダメ、

一枚26行や25行(もしくはそれより少ない行)はOK、一枚27行はダメ、

という具合です。

 

注意すべきはカッコや句読点などです。

句読点とは「。」「、」ですが、これらも1字としてカウントします。

かっこは、「( )」で1字としてカウントします。

 

たとえば、

 

( 国分坂 )

は、4字、とカウントします。

 

( 国文坂。)

は、5字ですね。

 

「㎡」は2字になります。

「㎏」も2字になりますね。

 

これらをワープロソフトを使って書くと、句読点やカッコを行末に埋め込んでしまったりするために、文字数オーバーになってしまうことがあります。

また「㎡」や「㎏」を1字としてカウントしてしまいます。

 

そこで、まず、ワープロソフトの設定を変更する必要があるわけです。設定の方法はバージョン等によっても違うと思いますので、

「文字数 行数 設定」

「禁則処理 無効」

と「検索」し、その設定方法を確認してみて下さい。

たとえば「一行20字以内、1枚26行以内」で書く場合は、「文字数 行数」の設定で、文字数を20字、行数を26行にするわけです。

「禁則処理」とは、句読点などが行の頭に来ないよう自動的に処理する機能です。この機能が働いていると、句読点やカッコが行末に埋め込まれ、文字数オーバーになってしまいます。

そこで「禁則処理」を無効化する必要があるわけですね。

この「禁則処理」を無効にすることで、句読点等の行末埋め込みが解除され、文字数オーバーを回避することができるようになります。

 

ただし、「㎡」や「㎏」「㎞」などを1文字としてカウントしてしまうことは、「禁則処理」では対応できません。

そこで、

「㎡」は「平方メートル」

「㎏」は「キログラム」

「㎞」は「キロメートル」

と記載するようにすることで、

これらの問題はクリアー出来るでしょう。

 

最初の設定が少し面倒ですが、文面の文字数、行数を全ていちいち確認するよりは、ワープロソフトの設定をしてしまう方が楽だと思います。

 

《使用可能文字》

使用可能文字は、「ひらがな・カタカナ・漢字・数字」と、固有名詞の場合に限って「英字」も使用できます。

 

《年月日・住所・氏名の記載と押印》

 差し出し年月日、差出人の住所と氏名、相手方の住所と氏名を記載します。差出人の氏名の後ろに、押印をしましょう。

押印は認印でも大丈夫です。もっとも、実印(市区町村に印鑑登録をしている印鑑)で押印すれば、証拠としての効力はより強くなるでしょう。

 

《文書が複数枚になった場合は契印を押す》

記載した書面が1枚でおさまらずに、複数枚になった場合には、ホチキス止めをして、各ページに契印を押印します。契印する印鑑は、名前の後ろに押印した印鑑と同じ印鑑を使用します。

「契印のやり方がよくわからない」というときは、契印せず、印鑑を郵便局に持っていけば、局員さんがやり方を教えてくれます。 

 

《郵便局に行く際に用意するもの》

・相手方に発送する文書

・上記の文書と全く同じものを2セット

(つまり、同じ文書を3セット用意します)

・封筒

(封筒には、文書に記載した差出人の住所と氏名、相手方の住所と氏名を、文書と全く同じように記載します。)

・予備の封筒(2~3枚)

(修正を求められることがあるので、予備の封筒を持っていくと良いでしょう。)

・印鑑

(文書に押印する印鑑。修正時に押印を求められることがあるので、必ず持っていきましょう。持っていく印鑑は、文書の差出人氏名の後に押印した印鑑と同じ印鑑です。)

・お金

(文書の枚数などにより変わりますが、1,500円~2,000円程度です。)

 

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3.私がお勧めする実務の「技」のご紹介(普通郵便との併用)

最後に、内容証明郵便(配達証明付)を利用する際に、覚えておいて欲しい実務の技をご紹介します。

まず、知っておいて欲しいのは、

原則として、そもそも内容証明郵便(配達記録付)は、相手方が受け取ってくれないと、「意思表示が相手方に到達した」ということを証明できません。

 

※上記の例外として「相手方がその内容証明郵便を容易に受け取ることができたのにも関わらず受け取らなかった場合」で、かつ、「その内容証明郵便の内容を相手方が予測することができた場合」には、 相手方に意思表示が到達したものとする、という判例があります。しかし、これらの要件を満たしているのか、それを裁判所に証明することができるのか、は実に不明確で難しいので、やはり上記の原則論で考えた方が無難だと思います。

 

※なお、クーリングオフの場合には、「発信」すれば効力が生じるので、契約終了の効力を発生させることについていえば、その通知が相手方に「到達」することまでは要求されません。

 

さて、相手方が不在の場合は、相手方のポストに不在通知票が投函されます。

そして、相手方が一定の保管期間内にその内容証明郵便を受け取らないと、その内容証明郵便は差出人に返送されてしまいます。(返送された場合は、意思表示が相手方に到達したということを証明できません。)

 

不在通知票には「誰からの内容証明郵便か」ということが記載されます。

相手方が、差出人との間で争いがあることを認識している場合、相手方は差出人から送られてきたその内容証明郵便を、あえて受け取りに行かない、ということが往々にしてあるのです。

自分と争いがある差出人の通知を受け取りたくない、という心理からです。

 

※相手方があえてその内容証明郵便を受け取りに行かなかった、ということが証明できれば、上記の判例により、「意思表示が相手方に到達」したものとすることができる可能性がありますが、それを証明することは非常に難しいでしょう。

 

そこで、実務では「相手方に内容証明郵便を受け取らせやすくするための工夫」を行うことになります。私が考える方法は2つです。

一つ目は、司法書士等が代理人となり、代理人から内容証明郵便を相手方に送るという方法です。

この方法によれば、差出人として不在通知票に記載されるのは、「紛争相手」ではなく「司法書士」等の名前です。

そのため、相手方が受け取る可能性が高くなるわけです。

 

しかし、この方法によるには、司法書士等に訴訟代理の依頼をしなければなりません。

それなりの費用が発生します。

数十万円以上の請求などであれば、司法書士等を訴訟代理人にする意味は大いにあると思いますが、数万円の請求等の場合には、司法書士等を訴訟代理人にしてしまうと、費用倒れになってしまうことが考えられ、なかなか現実的ではありません。

 

では、あまり費用を掛けないで、かつ、なるべく相手方に内容証明郵便を受け取って貰うには、どうしたらよいのでしょうか?

それが、私がお勧めする二つ目の方法です。

 

それは、内容証明郵便(配達証明付)を相手方に送るのと同時もしくは少し前に、相手方に対して、普通郵便により、「この紛争に対するあなたの考え方を聴きたいので連絡がほしい」といった文面を送っておく、というものです。

 

いきなり内容証明郵便が届くと、相手方は緊張し、態度を硬化させてしまうことが多いものです。

その結果、内容証明郵便を受け取らない、という事態になることもしばしばです。

 

そこで、まず普通郵便を送付します。普通郵便であれば相手方のポストに送達されるので、相手方がその送付先に居れば、読んでくれる可能性が高いでしょう。

 

普通郵便で送付する書面には、

・紛争の概要

・この紛争をどうしても解決しなければならないという、こちらの事情

・この紛争に関して、あなたの考えを伝えて欲しいということ

・なるべく円満な解決をしたいので、是非ご協力頂きたいことと、こちらも可能な限り協力させて頂きたいということ

などを、丁寧な文章で記載し、

 

最後に、

「この紛争に関する私の考えの詳細は、別送する内容証明郵便でお送りしましたので、そちらも是非ご参考頂きたいと存じます」

といったことを記載します。

 

要するに「この紛争をそのままにはしておくことは絶対にできないということ」「相手方の言い分も聴く用意があるということ」を丁寧な文章で送ることで、相手方がこちらの内容証明郵便を「無視する」という事態をなるべく回避させる、という方策です。

 

もちろん、この普通郵便を送付したとしても、必ず相手が受け取ってくれる、というわけではありません。

しかし、私の経験則上の感触ではありますが、いきなり内容証明郵便を送付するよりも、丁寧な文章で上記内容の書面を送ることで、相手方が受け取ってくれる可能性がより高くなるように思われます。

 

なお、この「普通郵便書面」を送る際の注意点ですが、

・嘘は書かないこと

・できない約束はしないこと

を、厳守して下さい。

普通郵便であっても証拠書面にはなります。

もしもあなたが嘘や出来もしない約束を記載して送付すると、相手方はそれを証拠書面として裁判所に提出することができるのです。

嘘を記載すればあなたの言い分を裁判所は疑うようになるでしょうし、出来ない約束を記載し相手方がそれを要求したら、裁判所も相手方の言い分を認めることになる可能性が高いからです。

その点は、くれぐれも注意して下さい。

 

なお、相手方が業者であったり、まったく聴く耳を持たない相手だったりする場合は、この普通郵便による方法は行わない、ということも考える必要があります。

この普通郵便を出すことで、内容証明郵便を出すことを事前に教えることになるため、悪質な相手だと、「受け取らない」体勢を、万全に構築させてしまう可能性があるからです。

 

よって、「交渉可能」な相手方だと思われる場合には、

この「普通郵便を同時もしくは先行して送付し、相手の態度を軟化させる工夫」をしてみるとよいかもしれませんし、そうでない相手方であれば、この方法は使わない、という選択をしなければなりません。

 

 

 

 

いかがでしょうか?

お役に立てば、幸いです。

 

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以上、

内容証明郵便の書き方と、

実務の「技」のご紹介!

でした!

ご参考頂ければと思います。 

 

ではでは、ながながと、

ここまでお読みいただきまして、

誠にありがとうございました!

 

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