国分坂ブログ

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レーダー照射、K国側の「反論映像公開」の意味は?民事訴訟法で考えてみる?パートⅣです!

【この記事のまとめ:「あった」「なかった」の意見対立に関して、裁判所で使う「民事訴訟法」を用いて論理的に考えて見ましょう、という内容の第4弾!「抗弁事由の立証責任」について考察します!】

 

【この記事の対象者(特に読んで欲しい人):民事訴訟法で遊んでみたい人/知的好奇心が旺盛な人】

 

今回は、「民事訴訟法」を一般事例から考えてみましょう!の第4弾です!

 

「レーダー照射に関する事案」を取り上げて、ちょっと分かりにくい「民事訴訟法」を勉強してみましょう、という企画です。

なお、 実際の事案を例題にしていますが、あくまでも「民事訴訟法」を学ぶための素材として利用させて頂くだけで、実際の事案についての意見や批評などを語るものではございません。

その点、ご留意頂ければと思います。

 

さて、当ブログの過去記事のパートⅠ~Ⅲをすでにお読み頂いている方はお分かりかもしれませんが、K国側が「B省の飛行機が危険な飛行をしたため」と主張することは、B省の要求に対する「抗弁」主張である、というふうに「民事訴訟法」的には考えることができますよね。 

 

B省は、K国に対し、

「レーダー照射により損害を被った、再発防止策を示せ」といった要求をしました。

このB省の主張について、K国が「否認」した場合、B省は、

K国のレーダー照射があったこと、

このレーダー照射により損害を被ったこと、

を証明しなければなりません。

 

「否認」とは、「そんなことはなかったよ」という主張です。

つまり、

K国が、「レーダー照射などしなかったよ。だから謝罪しないよ」と否認した場合は、請求する側のB省が、K国のレーダー照射があったこと、このレーダー照射により損害を被ったこと、の証拠を示して証明しなければならないのです。

 

これに関して、B省は、先日、映像を公表しました。

B省としては、この映像が、K国のレーダー照射があったこと、このレーダー照射により損害を被ったこと、の証明になるよ、という主張です。

(この映像は、「直接証拠」ではなく「間接証拠」である、という考察を過去記事で行いましたね。)

 

では、今回、K国が公開を準備しているという「反論映像」とは、どのような意味を持つのでしょうか?

民事訴訟法的に考えてみましょう。

 

過去記事で、K国は「否認」に加えて、「予備的な抗弁」をすることができる、というお話をしました。

つまり、

「レーダー照射などしなかったよ。」

と否認しつつ、

「でも、仮にレーダー照射をしたとしても、それはG省の飛行機が危険な飛行をしたからであり、我々には責任ないよ」

という抗弁をする、ということです。

 

原告(B省)の言い分のすべてを否定する「否認」に対し、

原告(B省)の言い分の一部を肯定しつつ、結論部分を否定する「抗弁」というものですね。

例えると、原告が「貸したお金を返して!」と要求するのに対して、

被告が、「お金なんか借りていないよ!」と主張するのが否認、

「お金はたしかに借りたよ。でも、すでに返したよ!」と主張するのが抗弁です。

 

そして、被告(K国)が「否認」の場合した場合は、「原告(B省)」が自分の主張を「証明する責任を負う」のに対し、被告(K国)が「抗弁」をしたときは、「被告(K国)」がその抗弁の事実を「証明する責任を負う」、というルールでしたよね。

 

そうです、

今回のK国の「反論映像の公開」というのは、まさに、民事訴訟法的に考えると、K国(被告側)の「予備的抗弁」に関する「立証活動」なのだ、と解釈できるんですね!

つまり、K国が「反論映像を公開」するということは、民事訴訟法的に考えると、理にかなった行動であり、必要な行動であるといえるのです。

 

さて、そうしますと、今後の争点(両者の意見の主要な相違点)は、

「G省の飛行機の飛び方は、危険なものであったのか、なかったのか」という点になってくるわけですね、民事訴訟法的にいえば。

 

「危険な飛び方」かどうか、という点は、国際的なルールや基準があるでしょうから、それに今回の飛行データを当てはめれば解析できます。

K国側の出す映像が、「B省の飛行機が危険な飛行をしていた」ということを示すデータになっているかどうか、という点がポイントです。

つまり、K国は公開する映像により「B省の飛行機が危険な飛び方をしていたこと」を証明できるのか、ということです。

 

これに対して、B省側が行うべき行為は、「反証」活動です。

つまり、「B省の飛行機の飛行方法は適正だった」というデータを提出したり、「K国の出す映像は信用することができない」といった資料等を提出していく、といったことですね。

  

用語解説

※反証とは、立証の責任を有しない側が、立証の責任を有する側の主張を否定し、また否定する根拠等を示すことです。

・立証の責任を有しない側とは:「否認」の場合の被告、「抗弁」の場合の原告

・立証の責任を有する側とは :「否認」の場合の原告、「抗弁」の場合の被告

 

なお、「反証」と「立証」とで、より重要なのは「立証」です。

「反証」に失敗しても、それは「相手方の立証活動を阻害できなかった」という程度のことなのですが、「立証」に失敗してしまうと「自分の主張が裁判所に認められない」ということになってしまう可能性があるのです。

「反証」と「立証」、似た言葉ですが重みが全然違うのですね。

 

さて、 ちょっと、本件を「民事訴訟法」的にまとめてみましょう。

まず、B省は、公開した映像により、

「K国のレーダー照射があったこと」

「このレーダー照射により損害を被ったこと」

を、間接的に証明しようとしており(間接事実の立証)、

かつ、同じ映像で、

「K国側の証言が不正確であること」を証明しようとしています(補助事実の立証)。

これに対して、K国側は、

B省の主張をまず積極否認するために、

「レーダーは照射していない。カメラを動かしただけ」と主張し、

かつ、予備的抗弁として、

「B省の飛行機が危険な飛行をしたから(レーダーを照射した)。我々に責任はない」と主張して、この主張に対する立証の映像を公表する、と発言しているわけです(抗弁事実の立証)。

 

この場合の「民事訴訟法」的争点は、

・B省の間接事実の証明が成功し、B省の主張の存在を肯定できるか

・K国の抗弁事実の証明が成功し、K国の責任が否定されるか

という2点に、絞ることができる、と考えることができそうです。

 

このように絞った場合、今後、両当事者がとるべき「民事訴訟法」行動は、

B省としては、

「間接事実の立証」の更なる積み上げ、

「補助事実の立証」の補強、

K国の「抗弁事実の立証」に対する反証活動、

となります。

これに対し、

K国としては、

「抗弁事実の立証」(反論映像の公開)、

B省の「補助事実の立証」に対する反証活動、

「補助事実の主張と立証」ということになります。

  

用語解説

・「主要事実」は、原告が請求する権利を直接的に証明する事実。

・「間接事実」は、「主要事実」があることを推認させる事実。

・「補助事実」とは、「証拠」の信用力に関する事実。

※詳細は、当ブログの過去記事『レーダー照射の動画公開?証言に食い違い?民事訴訟法で考えてみる?パートⅡです!』をご参照下さい。

 

「民事訴訟法」を使って整理してみると、ごちゃごちゃとした主張がすっきりと整理できるような気がしませんか?

「ごちゃごちゃと言いあって、いい加減にして!」

と感じられた両当事者の主張が、ちょっと整理してみると、「なるほど、そういう意図で、そういう必要性から、そう言っているんだ」とわかり、「更に今後、こういうことを言ったり、行ったりする可能性がありそうかも」という風に、先の展開が見えてくるかもしれません。

 

「民事訴訟法」って、

実は「結構使える?」なんて、

思ったりしませんか?

(・・・しませんね。)

 

でもね、裁判所が使うテクニックですから、民事訴訟法は!

裁判所に持ち込まれる争いですよ、当事者のひっちゃかめっちゃかな言い分を整理して判断していくのですから、それはもう、合理的に、実践的に、作られているんですね、民事訴訟法は。

 

なので、もしも言い争う二人の間に入って「まあまあ」と割って入ってあげる際には、「民事訴訟法」を用いて両当事者の言い分を整理してみると、結構分かりやすくなるかもしれませんよ。

(ただし、民事訴訟法を用いて判断し勝手に裁定を下すと、両当事者から怒られるかもしれませんのでご注意を! 両当事者から求められた場合にのみ、「民事訴訟法的に整理するとこうなりますね~、そうするとこちら側の証明の責任が果たせていませんね~」なんてコメントしても良いのかも?)

 

まあ、「傾聴技法」などと違い、「民事訴訟法」を通常の生活の中で使おうというのは無理があるかもしれませんが、「思考訓練」としては有意義かな?と思いまして、記事にしてみた次第なんです。如何でしたでしょうか?

 

なお、繰り返しになりますが、あくまでも「民事訴訟法」を用いての知的遊戯、ということで記載しておりますので、実際の事案についての論評や考え方を表明するわけではございませんので、その点、くれぐれもご了承願います!

 

というわけで、以上、

「民事訴訟法」を用いての知的遊戯、第4弾!でした!

お楽しみ頂けたのであれば幸いです!

 

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ここまでお読み頂きまして、

有り難うございました!

 

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