国分坂ブログ

「歩くこと」「考えること」が好きな、国分坂です!

冬が来る前に!『対話篇』と『映画編』はどうでしょう!

今週のお題「読書の秋」です!

 

 今回ご紹介するのは、2冊、

金城一紀 著『対話篇』と『映画編』です!

 

 

  

 

 

1.はじめに(「対話篇」と「映画編」の読み方)。

ところで、

そろそろ、年末の空気が漂い始めましたね。

秋も、もう終わりそうです。

 

 きりりと引き締まった冬の空気も好きですが、

いろいろな味わいが混ざり合った秋の空気も、やっぱりいいですよね。

日ごとに失われていく暖かさ。

だから、寂しいような気持ちが、湧き上がってくるのでしょうか?

 

ひとは、

「有るとき」には分からず、

「無いとき」には不満で、

「失われていくとき」に、

焦りや、悲しみや、後悔を感じるようです。

焦りや悲しみ、後悔は、

自分自身を振り返らせてくれるのでしょう。

 

失われていく。このままでいいのか?

失われていく。残るものはないのか?

 

ひとは、そんなことを、

「失われていくとき」に

自問自答するのではないでしょうか?

 

金城一紀『対話篇』は、

私に、そんなことを考えさせてくれました。

 

そして『映画編』。

これは『対話篇』とは別の独立した小説ですが、

『対話篇』と『映画編』とは

連続した物語のように思えます。

 

私としましては、

できれば、

まず『対話篇』をお読み頂き、

その次に、

『映画編』をお読み頂くことをおススメしたいです!

 

『対話篇』は三つの短編からなっており、

『映画編』は五つの短編からなっています。

それぞれが独立した物語なのですが、

それぞれが交わり合い、響き合いながら、

大きな物語をつくり上げている、

そんな感じがします。

 

2.作品紹介:『対話篇』 

ちょっとだけ、作品のご紹介をしますね!

 

『対話篇』は、

【恋愛小説】

【永遠の円環】

【花】

の三篇からなっています。

 

  

 

 

 【恋愛小説】

この物語は、主人公である「僕」が、大学時代に知り合った、ある友人について語るお話である。

「僕」は、彼のことを思い出すたびに、一人の少女を思い出してしまう。

自分が14歳の不良少年だった頃に、初めて真剣に好きになった同級生の女の子。

あまりにも真剣で、あまりにも切ない、「僕」と少女の恋愛。

 

大学時代のその友人は、「僕」に、切なく可憐なその記憶を、どうしても思い起こさせてしまうのである。

 

その友人は、呪われた運命を背負っていたのだ。

呪われた運命。

それは、彼と親しくなった者は、皆、例外なく死んでしまう、という定め。

奇妙でおそろしく、悲しい定めだ。

 

そんな運命を背負う彼が、ある女の子と出会ってしまう。

そして、

彼と女の子は、恋に落ちてしまうのである・・・

  

【永遠の円環】

病院の個室に横たわる「僕」。

大部屋から個室に移されてすぐ、「僕」は脱走を試みたが失敗した。

もはや抗がん剤も投与されない「僕」には、残された時間はあまりない。

脱走したわけを聞く主治医に、本当のことを話せるわけがない。

 

死ぬ前に、殺さなくてはならないヤツがいる。

 

時間は、あまりない。

体もあまりいうことを聞いてくれない。

僕は、友人が欲しかった。

 

そう、殺人の手助けをしてくれる、友人を・・・

 

  【花】

「僕」は生まれて初めて意識を失った。

原因は、動脈瘤だった。そいつは脳の中にあるらしい。

手術は難しく、仮に成功しても、記憶障害が起こるかもしれない。

そんなことを医師は言う。

 

手術をする決断も出来ず、「僕」は会社を辞めて、長野にある実家へと帰った。

両親には、学生時代に諦めた司法試験に、再びチャレンジをする、と嘘をいって。

「僕」はただただ、寝て起きてを繰り返すだけの生活を無為に過ごしていた。

 

そんなとき、大学時代のゼミの先輩から電話があった。

先輩は弁護士をしている。

急なアルバイトを頼みたい、という連絡だった。

話を聞いてみると、知り合いの弁護士が運転手を探しているとのこと。

車で鹿児島まで行くので、その運転を頼みたいというのだ。しかも、高速道路は使わずに、国道だけを使って、鹿児島まで行くのだそうだ。

 

「僕」は、先輩に、その奇妙な依頼をする弁護士の名前を尋ねた。

 

鳥越 弘

 

有名な弁護士だ。25年もかけて、被告の冤罪を晴らした弁護士。

 

「僕」は、荷物をまとめて東京へ赴いた。

その弁護士の運転手として、鹿児島へ行くために。

謎に満ちたドライブのわけを、知るために・・・

 

 

3.作品紹介:『映画編』   

続きまして、『映画編』のご紹介です。 

 

 

 

 

【太陽がいっぱい】

【ドラゴン怒りの鉄拳】

【恋のためらい/フランキーとジョニー 

 もしくはトゥルー・ロマンス】

【ペイルライダー】

【愛の泉】

の五編から成立しています。

 

【太陽がいっぱい】

デビュー小説の映画化が決まった「僕」は、招かれた映画の撮影現場で、小学生の頃の同級生、永花に会う。

「僕」と永花は、特段親しい間柄でもない、ただの同級生だった。しかし、「僕」と永花には共通の友人がいて、その友人が「僕」と永花との関係を、かろうじて繋ぎとめていたのだ。

その友人の名は、龍一。

小学生のころからの友人、いや親友である。

「僕」と龍一は、殴り合いのけんかをした後、仲良くなった。

父親がいない「僕」と龍一は、父親になろうとした男たちに、当たり前のように暴力を振るわれてきた。だからだろうか、「僕」と龍一は、殴り方ひとつで、そいつがどんな人間かを分かってしまうのである。

「僕」と龍一は、殴り合って、そして親友になった。

 

「僕」と龍一は、よく映画をみた。

そして、よく映画の話をした。

 

その頃、「僕」と龍一には、世界はアクション映画のように、シンプルに見えていた。

しかし時が経ち、いろいろのなものが見えるようになると、世界はシンプルなものではなくなってしまった。

「僕」も龍一も、現実の世界ではヒーローでいられないことを、知ってしまった。

 

規範であったアクション映画の世界は、

ふたりにはもう、

求めるだけの、存在しない世界になっていた・・・

 

【ドラゴン怒りの鉄拳】

「わたし」の連れ合いの死は、最初、ただの自殺と認定されたが、連れ合いの上司が告別式の際に「わたし」に向けて発した言葉によって、そうではなさそうだ、とおぼろげながらも見えてきた。

 

―  彼は、大切な書類を持ち帰ってしまった。見つけ次第、返して欲しい  ー

 

その上司は憔悴した顔で、しかし異様な力が籠った目をして「わたし」に言った。

告別式の帰りに、話が聞きたい、と声を掛ける男がいた。父が対応してくれたが、どうやら雑誌記者のようだ。

その後に発売されたゴシップ週刊誌には、連れ合いが勤める会社の薬害死亡事件の疑惑や、連れ合いの死について、扇情的な記事が踊っていた。

連れ合いの上司からは何度となく電話があった。

脅迫めいた言葉をいわれ、とうとう「わたし」は電話機のコードを引き抜いた。

外界との接触を断ったのである。

 

数か月がたった。

「わたし」は電話線を繋いででみた。電話機の埃を払っていると、ベルが鳴りだした。

警戒しながら電話に出る「わたし」。電話の相手は、レンタルビデオ屋の店員だった。

連れ合いが借りたらしいビデオテープの、返却催促の電話。

「わたし」は久々に外出した。

ビデオテープを返すために、レンタルビデオ屋へ。

 

「わたし」はそこで、鳴海と出会ったのだ・・・

 

【恋のためらい/フランキーとジョニー 

 もしくはトゥルー・ロマンス】

「僕」は、石岡が、教師や他の生徒と話しているところを見たことがない。

 

石岡は休みがちで、たまに来ても授業中に居眠りしていたり、本を読んていたりする。学校の行事にも参加せず、授業が終わると一目散に帰ってしまう。

たしかに彼女には近寄りがたい雰囲気があるが、皆が彼女を避ける理由は、それだけとは思えなかった。

 

8月31日のお昼過ぎに、石岡から電話がかかってきた。

イライラした声で、僕に暇かどうかを尋ねる石岡。

僕が暇だと答えると、

急に明るい声で、地元に遊びに来ないか、と誘う石岡。

わけを尋ねると、彼女は言った。

 

・・・一緒に、映画が見たいんだけど・・・

 

 【ペイルライダー】

「ユウ」は夏休みの最後の日、8月31日に、友達のカメちゃんと一緒に、行きつけのレンタルビデオ屋へ行った。

カメちゃんの提案による「映画のランキングベスト50」というレポートを、ふたりで共同して作るためだ。

二人してレンタルビデオ屋に入り、50本目の作品を探した。

「ユウ」は悩んだ挙句、『アラビアのロレンス』を選んだ。

 

お店を出て駐輪場に向かうと、幹島くんと板橋くんと松田くんが「ユウ」たちに絡んできた。幹島くんは有名な暴力団の幹部の息子、と噂されている。板橋くんと松田くんは、幹島くんの子分だ。

「ユウ」がクラスの三輪さんからバレンタインチョコをもらって以来、幹島くんはなにかと「ユウ」に絡んできた。

 

三人の執拗で凶悪な暴力に、「ユウ」は屈してしまいそうになる。

 

・・・そのとき、駐輪場の入り口で、ブオン!という激しい音が。

 

見ると、大きな黒いバイクが停まっていた。

ライダーも、上から下まで、全身黒ずくめ。異様な雰囲気。

 

「ユウ」や幹島くんたちには分かった。

黒いライダーの視線は、

自分たちの方へと、飛んできている・・・

 

 

【愛の泉】

おじいちゃんの一周忌は、全く盛り上がりを見せなかった。

その原因は、おばあちゃんである。

おばあちゃんの落胆ぶりが、ひどかったためだ。

もちろんその気持ちは痛いほど理解できた。

 

一昨年に、とても可愛がっていた義理の弟、弘大叔父さんをガンで亡くし、

その次の年に、最愛のおじいちゃんまで、ガンに奪われた。

 

孫たちは、おばあちゃんを何とかして元気づけようと話し合う。

お通夜の席で、おばあちゃんが映画の話をしていたことを、かおるが思い出す。

ケン坊がおばあちゃんに、「おじいちゃんとの一番楽しかったときの思い出は?」と尋ねたときの、おばあちゃんの答えだ。

おばあちゃんは、おじいちゃんとの初デートの際に観に行った映画の話をしてくれたのだ。

 

ローマが舞台の、映画。

 

リカとかおるが、その映画は『ローマの休日』であろうと推測する。

察しの良い律子ねえちゃんが、そうか、と頷く。

 

― おばあちゃんと一緒に『ローマの休日』をみんなで見よう。そして、見終わったあと、みんなでおじいちゃんの思い出話をしよう! ―

 

かおるは、おばあちゃんに小さなテレビ画面で『ローマの休日』をみせるのはやだ、という。大きなスクリーンでみせてあげたい。

・・「映画館」とか、そういうところで。

 

その言葉を聞いたとき、みんなの瞳がきらきらと、一斉に輝きだした・・・

 

4.終わりに。 

以上、『対話篇』と『映画編』のあらすじ、でした!

 三つの短編と、五つの短編ですので、

すみません、少し長くなってしまいました!

 

 それにしても金城一紀さんの文章、

本当に素敵ですよね~!

語りかけてくるような言葉。

とっても辛いことを言っているのに、さらりと軽く述べてしまうところなども。でも、却ってそのさらりとした言葉の奥に、深い悲しみなどを感じてしまうのですが。

 

『対話篇』と『映画編』。

一気に読むと少し長いですが、

でも、一気に読みたくなるんですよね!

 

あ~、あらすじを書いていて、

また、じっくりと読みたくなりました!

 

いろいろな愛のかたちが語られて、

悲しみ、苦しみ、喪失感、

そんなつらいことも語られますが、

心温まる物語もあったりして、

すべてがどこかで繋がっていく。

大きな大きな物語、だと思います。

 

もしも、

まだお読みでなければ是非!

おススメです!

 

 

 

いやいや、

本当にながながと、

ここまでお付き合いを頂きありがとうございました!

感謝です!!

 

以上、

冬が来る前に!

金城一紀著『対話篇』と『映画編』でした!

 

皆さん、ありがとうございました!!

 

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