国分坂ブログ

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レーダー照射?あった?なかった? 民事訴訟法で考えてみます?パートⅠ

【この記事のまとめ:「あった」「なかった」の言い争いを、裁判所で使う民事訴訟法を用いて考えて見ましょう、という内容です!】

 

【この記事の対象者(特に読んで欲しい人):民事訴訟法で遊んでみたい人/知的好奇心が旺盛な人】

 

今回は、「民事訴訟法」で遊んでみましょう!

という内容です。

実際の「具体的な事案」について、ああだこうだと考えたり、意見を述べたりするわけではございませんので、その点はご了承ください!

 

  

1.「主張・立証責任」とは。

 

いや、実際ありますよね、

「こんな事があった!」

「いや!そんなことはない!」

とか、

「こう言ったはずだ!」

「いや!言っていない!」

とか。

このような意見の対立があったとき、

裁判所ではどのようにその意見の対立を処理していくのか、

といいますと、主に「民事訴訟法」というテクニックを用いることになります。

 

「民事訴訟法」のテクニックにはいろいろあるのですが、

まずは【主張・立証責任】をご説明しますね。

 

「そんなことを言うなら証拠を見せろ!」

と、いったりしますよね。

まさに、これです。

ある事実を認めて貰うためには、その証拠を示さなければならない、

というルールです。

 

では、対立する当事者の「どちら」が、

その証拠を示さなければならないのでしょうか?

 

ごく簡単に言ってしまうと、

「ない」と主張する方は、証拠を示す必要がなく、

「ある」と主張する方が、証拠を示す必要がある、

ということになっています。

 

これを「悪魔の証明」と言ったりするのですが、

つまり、

「悪魔はいない!」と主張する方が、「いないことの証明」をすることは非常に困難なわけですが、

「悪魔はいる!」と主張する方は、裁判所に悪魔を連れて行けば証明できてしまうわけですから、

両当事者の公平を考慮して、「ある」と主張する方が証拠を示す責任を負う、という考え方が「民事訴訟法」では採用されているわけです。

 

「危険な電波を発信した!」

「いや、発信していない!」

と意見が真っ向対立した場合は、

「発信した」(「発信があった」)と主張する方が、その電波の発信された事実を証明する責任を負う、

というのが、民事訴訟法の考え方です。

そして、証明する責任を負う方がその証明に成功すると、裁判所はその主張を認定することになるのです。

 

2.認否と抗弁

 

さて、裁判所に訴えた方(原告)が「このようなことがあった!」という主張をした場合、相手方(被告)はその主張に対して、【認否】ということをしなければならない、というのが、民事訴訟法のルールです。

 

【認否】には、

・認める

・否認する

・知らない

・沈黙

という対応があります。

 

「認める(自白)」は、「このようなことがあった!」という原告の主張に対し、

「その通りですね!」と認めてしまうことをいいます。

「否認する」とは、「そんなことはない!」と主張することであり、

「知らない」は、「そんなの知らない!」と主張すること、

「沈黙」は、「このようなことがあった!」という原告の主張に対して、何らの意見も述べない、という対応の仕方です。

 

原告の主張を被告が「認める」と、原告の言い分を裁判所がそのまま認定することになります。

「そっちが危険な電波を発信した!」(原告)

「はい!そのとおり!」(被告)

と認めたら、問題は解決です。

(原告の勝ちですね~)

 

これに対して、原告の主張を被告が「否認する」と、原告は証拠を用いて、自分の主張を「立証」しなければなりません。

立証に成功すれば、裁判所は原告の主張を認定しますし、原告が立証に失敗すると、裁判所は原告の主張を認めません。

なお、民事訴訟法では、被告が「否認する」場合は、なるべくその理由を述べるよう求めています。(これを理由付け否認とか、積極否認とかいいます。)

「そっちが危険な電波を発信した!」

との原告の主張に対し、

「いや、電波など発信していない!ただカメラを動かしただけだ!」(被告)

と被告が理由を付けて否認した場合(下線部が理由)、

原告は、被告が危険な電波を発信したことを、立証する責任を負うことになります。

 

被告が「知らない」といった場合も、「否認」の場合と同様です。

ただし、「知らない」との主張は、被告が直接関与しない事実について述べることですので、

「そっちが危険な電波を発信した!」

との原告の主張に対し、

「知らない」(被告)

と主張するのは、おかしな対応となってしまいます。

(自分の行動を「知らない」?記憶喪失なの?ということになっちゃいますね。)

なので、この事例ですと、被告の「知らない」という認否方法はないのですが、

たとえば、

原告が

「第三国が被告を利用しようとしていた」

というような主張をした場合は、

被告はその主張に対し、

「知らない」

という認否も出来るわけです。

被告が「知らない」という認否をした場合、原告は自分の主張について立証する責任を負い、その立証に成功した場合のみ、裁判所は原告の主張を認定することになります。

 

 

被告が、原告の主張に対して「沈黙」した場合は、原則として、被告が原告の主張を「認めた」ことになり、裁判所は原告の主張を認定することになります。

原告が

「そっちが危険な電波を発信した!」

と主張したにも関わらず、

被告がこれに対して「沈黙」した場合、

(つまり認否を明らかにしなかった場合、)

裁判所は、原則として、原告の主張を認めることになるのです。

 

では最後に、

「抗弁」について説明しますね。

「抗弁」とは、原告の主張のうち、基礎的部分を認めつつ、結論的部分を否定する、といった対応のことをいいます。

たとえば、

原告の

「そっちが危険な電波を発信したから、損害が生じた!」

との主張に対し、

「確かに電波を発信したが、それは原告が先に、こちらに対して危険な行動をしたからだ。そのため、やむを得ず、電波を発信した。悪いのは原告だ!」

と言った具合に、被告が主張するものです。

「電波を発信した」ことは認めつつ、その原因は原告にあり、被告には責任がない、という主張です。

「否認」と「抗弁」の違いは、まさにここなんです。

 

「否認」は原告の主張と真っ向対立の否定ですから、

「電波は発信していない!」

になりますが、

「抗弁」は、

原告の主張の基礎的部分を認めながら、結論的部分を否定します。

 

良くある例では、

原告の

「貸したお金を返せ!」

という主張に対し、

 

(単純)否認だと、

「借りていない!」

 

理由付け否認だと、

「借りていない!もらったんだ!」

 

抗弁だと、

確かに借りた。でも、すでに返した!」

 

となります。

 

さて、「否認」と「抗弁」との大きな違いは、

「立証の責任を誰が負うのか」の部分です。

 

否認の場合、

被告が否認したら、原告が自分の主張を立証する責任を負う、と説明しました。

ところが、抗弁の場合は、

被告が抗弁の内容について、その立証をする必要があるのです

「確かに借りた。でも、すでに返した!」

と被告が抗弁をした場合、

被告が「原告からお金を借りたこと」を認めているわけですから、原告は「被告にお金を貸したこと」を立証する必要がないのです。

これに対し、被告が主張する「すでに返した」の部分は、原告が「返してもらった」ことを認めなければ、被告がその「返したこと」を立証しなければならない、ということになるのです。

(原告は、返してもらって「ない」ことの立証責任は、負いません。)

 

被告の「認否」までは、原告が立証する責任を負っていたのに対し、被告が「抗弁」を行うと、今度は被告が立証する責任を負うようになります。(立証責任の転換。)

(そして、被告の抗弁に対して、更に原告が抗弁(再抗弁)をした場合は、その再抗弁の内容について、今度は原告が立証の責任を負う、という具合に進行していきます。)

 

3.予備的主張

さて、認否や抗弁をするとき、「予備的に主張する」、ということも裁判所においては可能なんです。

 

たとえば、

原告が「貸したお金を返せ!」

と主張した場合、

被告は、

「お金は借りていない!もらったんだ!」

と主張しつつ、

「もしも、借りていたとしても、すでに返したよ!」

と主張することができます。

これを、予備的抗弁といいます。

 

まず最初に、

「お金は借りていない!もらったんだ!」

と「理由付け否認」をしつつ、

もしも原告が「お金を貸したこと」の立証に成功してしまった場合に備えて、

予備的に、

「借りたとしても、すでに返したよ!」

と「抗弁」する、という方法です。

 

第一の「理由付け否認」が破られたら、

第二の「抗弁」で対抗する、

という戦略ですね。

 

「電波など発信していない!ただカメラを動かしただけだ!」

「そっちが危険な威嚇的行動をとったんだ!」

と、一貫性のない主張をしているようにみえるかもしれませんが、

実は、

民事訴訟法になぞらえてこの主張をみてみると、

「理由付け否認をしつつ、予備的な抗弁をしているのかな?」

と思えたりして面白いですね。

 

・・・さてさて、

繰り返すようですが、

あくまでも以上に関しましては、「民事訴訟法」を用いての知的遊びに過ぎない、ということを重ねて申し上げておきます。

「特定の事案」について、なんらかの意見を示すものでは決してありませんので、その点はくれぐれもご留意下さい。

ただ、「遊びである」ということを前提にしつつ、「民事訴訟法」という理論を用いて対立する意見をちょっと整理してみると、一見矛盾しているような言い分にも、なんらかの意図や思惑が推測できるような気がして、なにやらちょっと面白いかなあ~、と思った次第なんです。

 

(なお、政治的な問題や外交問題、軍事問題などが絡むと、たとえば「主張について立証の責任がある」とはいっても、簡単にはその「証拠」を示すことが出来ない場合がある、というあたりが、難しいのだろうなあ、と思うわけです。

証拠を出すこと自体が政治的問題に発展しうるとか、軍事機密に抵触してしまうとか。

なので、そう簡単には明確にし難いことなどが、世の中にはいろいろとあるのかもしれませんね~)

 

というわけで、

今回は「民事訴訟法」での知的遊戯、

でした!

いかがだったでしょうか?

お楽しみ頂けたのであれば幸いです!

 

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以上、ここまでお読み頂きまして、

有り難うございました!

 

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