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会社の定款を変更すると、監査役が「自動的に退任」してしまうことがあります!ご注意下さい!

【要約:監査役の監査範囲を会計に関するものに限定する旨の定款変更などをすると、自動的に監査役が退任することになります!要注意です!】

 

【この記事の対象(特に読んで欲しいひと):法務に関わる人/法律に興味がある人】

 

 

1.次の「定款変更」をすると監査役が「自動的に退任」します!

会社(株式会社)の定款を変更すると、自動的に監査役が退任してしまうことがあるんです。

 

※なお、監査役を設置していない会社の場合は、この記事は読む必要ありません。監査役を設置しているかどうかは、会社の登記事項証明書(:履歴事項全部証明書など)を見て頂ければ確認頂けます。

履歴事項全部証明書の最後の方に、「監査役設置会社」という記載があれば、監査役を設置している会社です。「監査役設置会社」という記載がなければ、監査役を設置していない会社、ということになります。

 

さて、

次の定款変更をすると、監査役が自動的に退任します。(会社法336条)

 

①「監査役を置く」旨の定款の定め「廃止」

②「委員会を置く」旨の定款変更

③監査役の「監査の範囲を会計に関するものに限定する」旨の定款の定め「廃止」

④発行する全部の株式につき「譲渡制限規定」を「廃止」

 

順番に確認しましょう。

①「監査役を置く」旨の定款の定め「廃止」

これは、まあ当然ですよね。

「監査役を置く」旨の定めを廃止するわけですから、定め廃止以降、この会社は監査役を置かない会社になります。

よってこの会社の監査役は、監査役を置く旨の定款の定めを廃止した時点で退任することになります。退任の日付けは、定款の定めを廃止した日付けです。

 

②「委員会を置く」旨の定款変更

これは、一部の上場会社などしか行わないと思いますので、あまり細かく触れませんが、委員会設置会社になると監査役を置かないことになるため、会社の監査役は退任することになります。

 

③監査役の「監査の範囲を会計に関するものに限定する」旨の定款の定め「廃止」

この記事において、

最もご注意頂きたいのが、この定款変更です!

 

監査役の「監査範囲を会計に関するものに限定する」旨の定款の定めを「廃止」すると、この会社の監査役の監査範囲は「業務監査権限まで拡大」されます。

つまり、今まで「会計に関するもの」しか監査権限がなかったところ、今後は「会計に関するもののみならず、業務に関するもの」についても監査する権限が拡大するのです。

今までの監査役は「会計に関するもの」についての監査能力がある、と考えられて選任されたわけですから、権限拡大後の「業務に関するもの」についての監査能力があるかどうかは不明です。

よって、監査する権限が拡大された時点(すなわち定款変更時点)で、今までの監査役は退任することになるわけです。

(その後に選任される監査役は、「会計に関するもののみならず、業務に関するもの」についても監査する能力がある者が選任される、ということになるでしょう。もちろん、同じ監査役を選任しても構いません。その場合は、当該監査役の「重任」登記を申請します。)

 

なお、定款に、監査役の「監査の範囲を会計に関するものに限定する」旨の定めを新たに設置したときは、その会社の監査役は、退任しません

なぜなら、この定款変更は、監査役の監査範囲を「会計に関するもののみならず、業務に関するもの」から「会計に関するもののみ」に縮小するという変更です。

今までの監査役は「会計に関するもののみならず、業務に関するもの」についても監査能力がある者が選任されていたわけですから、権限縮小後の「会計に関するもののみ」の監査能力は、当然その監査役は有している、と考えることができます。

よって、監査役の「監査の範囲を会計に関するものに限定する」旨の定めを新たに設置したときは、その会社の監査役は、退任しない、ということになるのです。

 

④発行する全部の株式につき「譲渡制限規定」を「廃止」

これは、いいかえますと、今まで「非公開会社」であった会社が「公開会社」になる場合は、その会社の監査役は退任することになる、ということです。

これも、事例としてはあまりないと思われますが、「公開会社化」するときは、監査役は退任する、と覚えておいて下さい。

(※ちなみに、「公開会社化」するときは「取締役」も退任します(会社法332条4項3号。)

 

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2.監査役が退任したときは、後任者の選任が必要です。

上記1の①~④の定款変更をしたときは、自動的に監査役が退任してしまうわけですから、必ず忘れずに後任監査役の選任決議をして下さい

上記1の「定款変更決議」を行う株主総会において、一緒に「後任監査役選任決議」をしておくと良いでしょう。

なお、上記1の①の定款変更(「監査役を置く」旨の定款の定め「廃止」)の場合には、当然ながら、後任監査役の選任決議は不要です。(今後、監査役を設置しない会社になるわけですから。)

 

3.監査役の退任や後任者選任の登記手続きを忘れずに!

以上見てきましたとおり、

定款変更により監査役が自動的に退任した場合や、その後任監査役を選任したときは、監査役変更登記を申請する必要があります。

忘れずに登記申請手続をして下さい!

 

申請すべき期間は、変更があってから2週間以内とされてます。

定款を変更したことで自動的に監査役が退任するときは「定款変更の効力発生日」から2週間以内に登記申請をする必要があります。

 

この変更登記申請をせずに放置していると、過料(罰金のようなもの)が課されてしまうことがあるんです。

上記1の定款変更により監査役が自動的に退任してしまうときなどは、退任していることに気がつかずに放置してしまう、ということがあるため、特に注意して下さいね!

 

以上、

会社の定款を変更すると、監査役が「自動的に退任」してしまうことがあります!

でした!

 

最後までお読み頂きまして、有り難うございました!

 

 

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