保有割合50%ずつで会社を設立?それはお薦めできません・・
【要約:たとえば会社を二人で設立する場合、50%ずつの株式保有割合だと、最悪、何の決議もできない事態になりかねません。最低でも、どちらかが51%以上を保有するようにすべきです!】
【この記事の対象(特に読んで欲しいひと):会社の設立を考えている人/法務に関わる人/法律に興味がある人】
1.株主総会は「過半数」の出席で成立します
たとえば株式会社の場合、株主総会の普通決議については、会社法309条1項により次のように定められています。
会社法309条1項
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の、議決権の「過半数」を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の「過半数」をもって行う。
この条文で重要なキーワードは「過半数」という言葉です。
「過半数」とは、どういう意味でしょうか?
半分以上?
違います。
「半分以上」というのは、半分、もしくは半分より多い、という意味です。
それに対して、
「過半数」とは、「半数」を「過ぎる」ということですので、
いわば「半数+1」ということです。
具体的にいいますと、
100の「半分以上」は、50、もしくは50より多い、という意味です。
100の「過半数」は、51、という意味です。
309条1項の条文で考えますと、
まず、「総会が成立」するためには、議決権の「過半数」を有する株主の「出席」が必要、ということになります。(定足数といいます。)
議決権の総合計数が100である場合、
51の議決権を有する株主の「出席」が必要となります。
(1人または複数の株主の議決権合計数が51になればOKです。)
そして、成立した総会において、出席した株主の議決権の「過半数」が「賛成」したときは、その決議は「可決」することになります。
たとえば、「出席」した株主の議決権が51であるときは、
51の「過半数」、すなわち26の議決権を有する株主の「賛成」があれば、可決します。
つまりですね、
もしも、A株主が50%、B株主が50%を保有している場合で、
A株主とB株主が対立してしまった場合、
困ったことが起きてしまうのです。
A株主が決議したい内容で総会を開催することになった場合、
B株主が出席してくれないと、株主総会は成立しない、
ということになるのです。
A株主の株式保有は50%であり、半数でしかありません。
「過半数」ではないのです!
よって、A株主のみでは株主総会は成立しません。
反対に、B株主が決議したい内容で総会を開催することになっても、
同じことがいえますね。
A株主が出席しないと、株主総会が成立しないのです。
株主総会が成立しない以上、当然、議案は可決されません。
よって、
A株主が50%、B株主が50%を保有している会社の場合、
A株主とB株主が対立してしまったときには、
総会が開催できない(成立しない)、
という事態に陥ってしまう可能性があるのです。
「二人でやろう!」と会社を設立するときは、
もちろん意気投合し、仲良く将来を思い描いているわけです。
でも、
ときには仲違いするかも知れないし、
経営方針をめぐって、鋭く対立する可能性も当然あります。
会社の意思決定機関として、
株主総会決議は非常に重要です。
株主総会は、いわば国でたとえると国会のような感じですからね。
国会が開けない、
となったら、その国はとんでもないことになりますよね。
規模は違えど、会社も同じ。
株主総会が開催できない、
という事態はどうしても避けなければなりません。
そのためには、株式保有割合は、
最低でも51 % 対 49 % にすべき、
ということになります。
51%保有する株主が出席すれば、総会は成立し、その株主が賛成すれば、普通決議は可決されます。
株主が3名以上いるときは、
筆頭株主が51%以上保有するようにして下さい。
2.できれば、筆頭株主は67%以上を保有した方がいいです!
最低でも51%、でも、
できれば筆頭株主は67%以上を保有すべきです。
そのわけをご説明しますね。
会社法309条2項を見てみましょう。
会社法309条2項
「前項(会社法309条1項)の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の、議決権の「過半数」(3分の1以上の割合を定款で定めたときはその割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあってはその割合)以上に当たる多数をもって、行わなければならない。ー以下略ー
この条文は、すこし複雑なので、カッコの部分は、説明を今回は省略しますね。(カッコ部分まで説明すると混乱しがちなので。要は、定足数の緩和や決議要件の加重のお話しなんですが。)
この条文を簡単に説明しますと、
定款の変更などいくつかのことに関しては、309条1項の決議(過半数の出席、出席した過半数の賛成)では可決できませんよ~、ということです。
極簡単にいいますと、
過半数の出席、出席した3分の2以上の賛成、が必要となる決議事項がある、
ということです。
100の3分の2は66.666・・
ですよね。
つまり、67%、
これが3分の2です。
要するに、
総議決権の67%以上を保有していれば、
その株主のみで会社法309条2項の決議要件を満たすことができる、ということになるのです。
上場会社などは別として、一般的な会社の場合、状況に合わせて素早く決議を成立させる必要がある、という場合が多いです。
たとえば定款変更決議、増資決議、減資決議、合併決議などなど。
筆頭株主が素早く適確に意思決定し、
それを確実に実行するためには、
筆頭株主が67%以上を保有すべき、
ということになるのです。
会社を設立する場合や増資をする場合、
株式の保有割合のいかんによって、
会社の意思決定に障害を及ぼしかねない、
という可能性を、
少しお考え頂ければと思います。
以上、
保有割合50%ずつで会社を設立することはお薦めできません!
でした!
お読み頂きまして、有り難うございました!