国分坂ブログ

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「実質的支配者となるべき者の申告書」が会社設立時に必要になります!

【要約:2018年11月30日から、株式会社・一般社団法人・一般財団法人設立に際し、公証役場での定款認証を受ける際、「実質的支配者となるべき者の申告書」の提出が必要となります!】

 

 

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1.はじめに(「実質的支配者となるべき者の申告書」の改正) 

2018年11月30日からの改正です!

 

株式会社、一般社団法人、一般財団法人、の設立に際して公証役場での定款認証を受ける際、嘱託人は、法人成立時の「実質的支配者となるべき者」の、

・氏名、住居、国籍、生年月日等

・ その者が暴力団員に該当するか否か

・その者が国際テロリストに該当するか否か

を申告しなければならない、ということになりました!

 

2.「嘱託人」とは

ここでいう「嘱託人」とは、定款作成者、または定款作成代理人ですので、発起人、発起人代表者、発起人から委任を受けた司法書士、などが該当します。

 

3.対象となる法人

対象となる法人は、

 ・株式会社

 ・一般社団法人

 ・一般財団法人

ですので、これ以外の法人は不要です。

(たとえば「特定目的会社」などは不要。)

 

4.施行日

施行日は、2018年11月30日からです。

これは「申請日」が基準です。

つまり、電子定款認証などの場合、オンライン申請を2018年11月29日にしていて、

認証日が11月30日の場合は、「申請日」が11月30日より前ですので、「実質的支配者となるべき者の申告書」は不要、ということになります。

 

5.「実質的支配者となるべき者」とは

実質的支配者となるべき者とは、

①設立する会社の議決権の50%を超える議決権を、直接または間接に有する自然人

②上記①がいない場合は、設立する会社の議決権の25%を超える議決権を直接または間接に有する自然人(その該当者全員)

③上記①と②いずれにも該当する者がいない場合は、出資・融資・取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人(その該当者全員)

④上記①②③いずれにも該当する者がいない場合は、設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人

となっています。

 

ちょっとごちゃごちゃしてますが、一般的には、「自然人(個人)」が発起人になる場合は、過半数を有する発起人がいることが多いと思いますので、その場合は①、つまり過半数(50%超)の議決権を有する発起人が「実質的支配者となるべき者」でいいわけですよね。

 

6.発起人に「法人」があるときには特に注意してください

問題は、発起人に「法人」がいる場合です。

発起人に「法人」がいた場合、考えるべき点は、2点デス!

 

まず1点目、その「法人」が上場企業、または上場企業の子会社であるかどうか。

 

もしも、その「法人」が上場企業、または上場企業の子会社である場合は、その「法人」は自然人とみなされます

(より正確にいいますと、「国、地方公共団体等、上場企業(外国会社も含む)及びその子会社は、自然人とみなされます。)

 

つまり、発起人に法人が混じっていて、その法人が上場企業等であれば、自然人として扱って考えればよい、というわけです。

その上場企業が50%超の議決権を有していれば、その上場企業が「実質的支配者となるべき者」になります。

 

次に2点目。

その「法人」が上場企業または上場企業の子会社でない場合は、その法人を介して、議決権を間接的に保有している「自然人」、を考えます。

 

たとえば。

設立法人の100%の議決権を有するA法人が「上場企業でない」場合、

A法人自体は「実質的支配者となるべき者」には該当しません。

この場合、A法人の株主構成を確認します。

A法人の株主aがA法人の議決権を100%保有している場合は、設立法人の「実質的支配者となるべき者」はaになります。

 

もしも、設立法人の100%の議決権を有するA法人が、上場企業でない場合で、A法人の株主が、自然人甲(A法人の議決権20%保有)と、乙法人(A法人の議決権80%保有)であった場合は、乙法人の株主を確認し、Xが乙法人の議決権100%保有していれば、Xが設立会社の実質的支配者となるべき者に該当します。

 

少し分かりにくいですよね!

でも、図など書きながらじっくり考えれば、それほど難しくはないと思います。

 

ただ、注意すべきなのは、発起人が法人の場合で上場企業等ではない場合、その法人の株主名簿を資料として提出する必要があり得る、という点です。

更には、その発起人法人の株主が法人の場合は、当該株主である法人の株主名簿も必要になる、というわけです。

 この制度は、まだ始まったばかりですから、現場である公証役場も混乱していることが予想されます。「実質的支配者となるべき者」は誰か?を確認するのに時間がかかる可能性があるわけです。

 

たとえば司法書士事務所の場合で、「急いで設立してほしい!」というご要望を受けたときには、このような手続きが必要になったことを依頼人にしっかりと説明し、

発起人の構成、発起人中に法人がいるかどうかの確認、

その発起人が上場企業等か、

その発起人の株主構成はどうか、

といったことを、定款の中身を考えるのと同時に、場合によっては先立って、依頼人から確認する必要があるかもしれません。

 

7.「申告受理証明書」を公証役場で受け取りましょう!

公証役場で「実質的支配者となるべき者の申告」をして、定款認証をしたら、必ず「申告受理証明書」を発行してもらい、受け取りましょう!

この「申告受理証明書」は、のちのち金融機関等から提出を求められる可能性があるからです。

法務局で「設立登記」が完了したら、金融機関において、その会社の「口座開設」をする必要があると思いますが、この際、金融機関から、

・法務局で発行してもらう「登記事項証明書」

・法務局で発行してもらう「法人の印鑑証明書」

に加えて、上記の、

・公証役場で発行してもらう「申告受理証明書」

の提出を求められる可能性が高いのです。

 

忘れずに、公証役場で「申告受理証明書」を発行してもらってください。

この「申告受理証明書」は、申告した公証役場にて、無料で発行してもらえます!

 

8.記載例

最後に、「実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)」の記載例を、私の方で簡単に作ってみました。

【前半部分】

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定款認証をお願いする公証役場名、公証人名を記載(※具体的な公証人名ではなく「認証担当公証人」という記載でもOK)し、嘱託人は「発起人・発起人代表者・発起人から委任を受けた司法書士」のうちのどれかの、住所・氏名を記載します。

なお、押印は「認印」でも大丈夫です。

 

日付に関しては、公証役場に提出した日、を記載します。定款認証日よりも前に、この申告書をPDFにして公証役場宛のメールに添付して送る場合は、その送付日を記載します(定款認証日前の日付で大丈夫です!)。

つまり、定款内容の事前打ち合わせの段階で、この申告書を出してしまってもOK、ということになります。

 

「実質的支配者」の該当事由が、①~④のどれになるかを判断したうえで、必ず、①~④までの□にチェックをしてくださいね!

(①~④どれになるのか、前述の【5.「実質的支配者となるべき者」とは】、もしくは【6.発起人に法人があるときは特に注意してください】あたりをご参考下さい。それでも分からないときは、定款認証を行う公証役場に相談してみましょう!)

 

【後半部分】

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実質的支配者となるべき者の住居・氏名・国籍・性別・生年月日、議決権の割合を記載します。

「住居」とは「住所」または「居所」のことです。日本に「住所」がある方は、印鑑証明書等の「住所」を記載します。外国籍の方などで、日本に住所が無い方は「居所」を記載することになります。

「実質的支配者該当性の根拠資料」は、定款や株主名簿、法人登記事項証明書などになるでしょう。

表の右側の「暴力団員等該当性」の部分が、「該当」となったとき(つまり、暴力団員等が実質的支配者となる会社の定款認証をしようとするとき)は、公証人から事情を聞かれることになります。(定款認証を受けることができなくなる可能性があります。)

司法書士が嘱託人となるときは、依頼者の本人確認にあわせて、実質的支配者となる方の「暴力団員等に該当しないこと」の確認も、必要になってきますね。

 

※実質的支配者本人以外(司法書士等)が申告書を作成する場合、当該申告書は本人以外の者(司法書士等)が全文作成する必要があります。

そこで、その実質的支配者が暴力団員等ではないことの確認書面として、申告書とは別の用紙に、実質的支配者に該当する本人が「暴力団員等に該当しない」旨等の記載をし署名押印したものを頂き保管する、といった対処をすることになると思います。

 

 なお、事案が複雑な場合は、事前に公証役場と打ち合わせをしておくと良いでしょう。

 日本公証人連合会のパンフレット等も、確認してみてください。

 

 

以上、「実質的支配者となるべき者の申告書」の改正でした!

 お読みいただきまして、ありがとうございました!

 

 

 

 

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