国分坂ブログ

「歩くこと」「考えること」が好きな、国分坂です!

「住民票」の「第三者請求」の注意点!(「死亡を証する書面」としての住民票のお話)

【要約:正当な理由があれば、他のひとの「住民票」を取得できる場合があるのです!(住民票の第三者請求デス!)】

 

【この記事の対象(特に読んで欲しいひと):司法書士事務所の人/法務に関わる人/法律に興味がある人】

 

  

1.死亡を証する書面 

まずは、「死亡を証する書面」についてのお話です。

会社の役員が死亡した場合、法務局にその役員が死亡したことを申請する必要があります。

その際、申請書に添付する書面として「死亡を証する書面」を提出することになっておりますが、

この「死亡を証する書面」の具体例としては、

・死亡したことの記載がある戸籍謄本又は戸籍抄本

・遺族からの会社に対する死亡届

・死亡の記載がある住民票

などが一般的ですね。

一番簡便なのが、「遺族からの会社に対する死亡届」です。

同居の親族などに記載してもらい、署名押印してもらえばOK。

押印は認印でも大丈夫です。

「遺族からの会社に対する死亡届」の書式はとくに決まりはないので、

任意のもので結構です。

たとえば・・・

【死亡届記載例】

                        死亡届

 貴社の取締役であった国分坂桜丸は、

平成30年3月3日に死亡いたしましたので、

その旨お届け致します。

平成30年3月10日

届出人  国分坂市本町一丁目1番1号

     国分坂 一郎  

     (続柄 長男)

 

といった具合です。

さて、親族がいらっしゃればこれでいいのですが、

では、

親族がいらっしゃらない場合には、どうなるのでしょう?

 

そう、

今回私が経験したのが、

「親族が全く存在しない」というケースだったのです・・!

 

株式会社の取締役の方が死亡されたんですが、

その方には親族が全くいらっしゃらなかったのです。

会社の法務担当の方から「どうしましょう・・?」と

ご相談されまして・・

 

親族がいらっしゃらないので、

「遺族からの会社に対する死亡届」は書いてもらえない。

「戸籍謄本」や「戸籍抄本」も取ってもらえない。

困ったなあ、と思っていたら、

会社のご担当の方が、

「「死亡届・死亡診断書」ならあります!」

とおっしゃってくれました。

 

「死亡届・死亡診断書」は1枚でセットになっておりまして、

左側が死亡届、右側が死亡診断書、というものです。

臨終に立ち会った医師が右側の死亡診断書に記載して、

それを親族や同居人に渡してくれます。

親族や同居人は届出人として左側の死亡届に記入し、

それを役所に提出するわけです。

この「死亡届・死亡診断書」、

原本は役所に提出してしまうので、

提出する前に、必ずコピーをとっておきます。

あとで、保険金の請求や相続税の申告等で必要になりますからね。

 

その「死亡届・死亡診断書」のコピーを

関係者からお預かりしてます、

と会社の法務担当の方がおっしゃるわけです。

お、それでいけるんじゃない?

ということで、

「死亡を証する書面」として「死亡届・死亡診断書」(写)を

使ってみることにしました。

  

2.登記の申請(株式会社の取締役死亡の場合)

 登記の申請書はこんな感じですね。

 

【登記申請書記載例】 

  株式会社変更登記申請書

会社法人等番号 0000-00-00000
フリガナ コクブンザカショウジ
商号 株式会社国分坂商事
本店 東京都国分坂市新町二丁目2番2号
登記の事由 取締役の変更
登記すべき事項 

 取締役上杉謙信は平成30年4月19日死亡
登録免許税 金1万円

(※会社の資本金が1億円を超えるときは3万円です)
添付書類  
死亡を証する書面 1通

 

上記のとおり登記の申請をする。

 平成30年4月27日

東京都国分坂市新町二丁目2番2号

株式会社国分坂商事

東京都国分坂市本町一丁目1番1号

代表取締役 国分坂一郎 

電話番号 03-0000-0000

 

東京法務局 国分坂支局 御中

 

さて、こんな具合に申請書を作成して、

「死亡届・死亡診断書」(写)をつけて法務局に

出してみました。

 

次の日、

リリーンっ、リリーンっ、リリーンっ、

と事務所の電話が鳴りました。

法務局からです。(ドキドキしますね)

担当の方は、

「この死亡診断書、コピーですよね。

うちは、原本じゃないとダメですよ」

とのこと。

「え、いや、原本は市役所に提出してますから、

コピーしかないですよ。

この方、親族が全くいらっしゃらないので、

親族からの死亡届も戸籍謄本も頂けないんです。

つまりこの「死亡届・死亡診断書」のコピーしか無いんです~!」

と、私は泣きついたわけです。

しかし法務局のご担当は冷静に、

「死亡診断書、病院で再発行してもらえないですか?」

あ、なるほど。

でも、親族じゃないと再発行請求は無理じゃないのかなあ、

と思いつつ、

「わかりました。病院に確認してみます」

といったん電話を切り、病院に連絡しました。

事情を話すと、病院の事務の方は、

「・・そうですか。基本的には三親等内の親族の方でないと

発行できないのですが・・」

と言葉を濁します。

 

死亡診断書の再発行に関しては、

医師法19条により、

医師は正当な事由なければ死亡診断書の発行を拒んではならない、

となっていますが、

再発行を要求できる「請求権者」は誰か、

ということについては各病院に任されているようです。

 

こちらの病院では「三親等内の親族」であれば再発行請求可能、

と定めているようで、事務の方は、

「うーん、それ以外の方が請求するのであれば、

出せるかどうかは分かりませんねえ・・。

医師に相談してみないと~・・うーん・・・」

とお困りの様子。

もちろんそれ以上に困っているのは私なんですが、

事務の方の「うーん、うーん」を聞いているうちに、

私、はっと閃いてしまったのです。

 

シャキーン!

★★★ 住民票の第三者請求! ★★★

 

 

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3.第三者からの住民票の請求

 説明しましょう!

住民基本台帳法には、

”本人等以外の第三者が正当な理由を申し出て、

市町村長がそれを相当と認めたときは、

その第三者に対し、住民票を交付することができる”、

といった規定があるんです!(同法12条の3の1項)

 

※ただし、世帯主や戸籍の表示などは記載されない

 基礎的条項のみの住民票になります。

 詳しくは条文でご確認下さい。

 

お困りの病院事務員さんに「また電話します!」と

声をかけて、

私はすぐに市役所に電話しました。

市役所の担当の方は、

「なるほど。では正当な理由を示す資料を

持ってきてください。

住民票が登記手続きの添付書類になる根拠を確認したいので、

それについて記載がある書籍とか。

あと、会社の委任状も必要です」

 

私はいったんご依頼会社のご担当に連絡し、

改めて委任状を用意してもらいました。

(今回は「住民票取得のための委任状」ではなく、

「登記申請のための委任状」でよい、

と市役所の担当者がおっしゃったので、

登記委任状を会社からもう1通頂きました。

最初の1通は登記申請時に法務局に入れてしまいましたので。)

 

4.住民票の第三者請求での「正当な理由」を示す資料の例

さて、会社さんから委任状を頂き、

私は市役所に乗り込みました。

住民票の第三者請求に関する「正当な理由を示す資料」として

私が用意したものは・・

・会社の委任状(原本)

・会社の登記事項証明書

・書籍『詳細登記六法』(きんざい)

・書籍『商業登記ハンドブック』(商事法務)

の4点です。

(書籍は重かったけど、がんばって持っていきました!)

市役所窓口の担当の方に、

まず、『詳細登記六法』の商業登記法第54条4項を示して、

役員が退任した場合は〈これ(:退任)を証する書面〉を

添付しなければならない、

と定められていることを説明しました。

 

〈これ(:退任)を証する書面〉についての具体例については、

『商業登記ハンドブック』の役員変更の添付書類に関する記載部分を示し、

死亡による退任の場合の証明書として、

・戸籍謄抄本

・住民票

・遺族等からの会社に対する死亡届等

が「退任を証する書面」に該当することを、説明しました。

 

そのうえで、登記事項証明書を示して、

死亡した役員が誰であるかを特定し、

その者の「住民票」が必要となる、

ということを説明しました。

(ながながと、説明しました~)

  

待つこと15分、

じゃじゃーん!!!

見事、

死亡の記載が入った「住民票(除票)」を

入手できました!!

 

すぐに法務局に住民票を持っていき、補正手続きをしました。 

 その後、死亡診断書作成の病院にもお電話して

「すみません、不要になりました~!

ご心配おかけしました~っ」

とお詫びしまして。

 

無事に登記が完了した後、

登記事項証明書と原本還付した住民票をご依頼会社にお届け。

ご担当者からは「いやあ、助かりました~!」

と感謝して頂きました。

(私としては補正が入り完了が2日伸びてしまったので

すみませーんっ、という感じだったのですが。

ご担当者は喜んでくださって、

救われました。)

 

何でもないような「役員死亡による役員変更登記」ですが、

とても長い道のりでした!

 

以上、住民票の第三者請求、

宜しければ是非ご参考下さい!

(住民基本台帳法12条の3の1項)

 

 以上、「死亡を証する書面」と「住民票の第三者請求」でした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

 

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