国分坂ブログ

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丸山穂高議員への「譴責決議案」と「辞職勧告決議案」って、なんでしょう?

こんにちは、国分坂です。

今回は、日本維新の会の「丸山穂高議員」に関するお話です。
丸山穂高議員は、北方領土問題に関し不適切な発言をしたということで、現在、話題となっている人物ですね。
しかし、この記事では、丸山穂高議員の発言そのものについては触れません。
この記事では、丸山穂高議員に対する自民党・公明党の「譴責(けんせき)決議案」と、野党6党派による「辞職勧告決議案」に、焦点を当ててみたいと思います。

概要

丸山穂高議員が北方領土問題に関して不適切な発言をしたということで、丸山穂高議員が所属する「日本維新の会」は、2019年5月14日、同議員を除名処分としました。
更に同月17日、「日本維新の会」の協力要請のもと、野党6党派が衆議院において丸山穂高議員に関する「辞職勧告決議案」を提出しました。
これに対して、自民党・公明党は、同月21日、丸山穂高議員に関する「譴責(けんせき)決議案」を衆議院に提出しました。

「譴責決議案」と「辞職勧告決議案」

さて、野党は「辞職勧告決議案」を提出し、与党は「譴責(けんせき)決議案」を提出した、という格好ですが、それぞれの議案はどのようなもので、何が違うのでしょうか?

野党の出した「辞職勧告決議案」とは、文字通り「辞職」を「勧告」する決議です。
そう、「是非とも議員をやめなさい」という決議ですね。
議会の過半数の賛成で成立しますが、しかし、この議案が成立したとしても、法的拘束力はありません。
つまり、この「辞職勧告決議」が成立しても、議員を強制的に辞職させることは出来ないのです。

では、拘束力のないこの議案を提出する意味はなんなのでしょう?
それは、この議案が成立した場合、丸山穂高議員に対し「議会の過半数以上の者が、あなたは議員を辞めるべきだと考えているよ!」と知らしめることができ、更には国民に対し「我々を含めた議会の過半数以上の者が、丸山穂高議員は辞職すべきだと考えています」とアピールできる、ということなのでしょう。

これに対し、与党の出した「譴責(けんせき)決議案」は、「悪い行いや失敗を責め、反省を促す」ための決議です。
つまり、この議案が成立した場合、丸山穂高議員に対し「議会の過半数以上の者が、あなたの行いは正しくないと考えており、しっかりと反省すべきだと考えているよ!」と知らしめ、また国民に対して「我々を含めた議会の過半数以上の者が、丸山穂高議員の行いは正しくないと考えており、丸山穂高議員は反省すべきだと考えています」とアピールできる、ということなのでしょう。

相違点

・・結局のところ、何が違うの?という声が聞こえてきそうですね。
そうですね、「譴責(けんせき)決議案」は反省を促すだけの決議だし、「辞職勧告決議案」も法的拘束力のない決議です。
たいして変わらないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、ポイントは、「議員を辞めろ」というのか、「辞めるかどうかは自分で考えろ」というのか、の違いなのだと思います。

「辞職勧告決議案」は、「議員をやめろ」という議案(ただし、法的拘束力はなし)。
「譴責(けんせき)決議案」は、「(反省しろ。そして)議員を辞めるかどうかは自分で考えろ」という議案。

与党は、野党6党派が「辞職勧告決議案」を出してきたことに対して、これに同調せず、「譴責決議案」を出しました。
この与党の行動は、「丸山穂高議員に対しての行動」というより、「国民に対しての行動」である、と私は考えました。

与党の「譴責決議案」は「対丸山議員用」ではなく「対国民用」

つまり、「たしかに丸山穂高議員の発言は大問題だが、これに対して「議員をやめろ」というのは論理的に疑問点があり得る。そのことを我々がちゃんと理解していることを、国民にアピールできる絶好のチャンスなんじゃない?」と与党は捉えたのではないでしょうか?

もしもそうだとしたら、与党が「議員をやめろということに論理的疑問点があり得る」、と考えたのは何故か? ということになりますよね。
それは、2つの論点があるのだと思います。

選任・解任権限

ひとつは、選任・解任権限の問題です。
たとえば会社の取締役などもそうですが、「解任する権限は、選任する権限を有する者しか持たない」、というルールがあります。
取締役は株主総会決議で選任されますが、この取締役を解任するには、やはり株主総会決議が必要なのです。
社長や取締役会の決定で、取締役を解任することはできないのです。
取締役の選任権限を持つ株主総会だけが、取締役の解任権限を持つのです。

国会議員は、国民投票により選任されます。
国民により選出された国会議員を、国会が解任することはできないのです。
国民により選任された国会議員は、国民により続投を阻まれるのです(再選させないことで事実上の解任とするのですね)。
つまり、「丸山穂高議員が議員として今後も続投できるかどうかは、国民の判断に委ねられるべきだ」、というのが「選任・解任権限」のルールからすると正しい、ということになるのでしょう。

言論の自由

ふたつ目は、言論の自由についての問題です。
日本国民は、憲法において言論の自由が保障されています。
そして、国会議員は、国民の代弁者として国会で発言する者です。
よって、原則論として、国会議員には国民の代弁者として言論の自由が保障されるべきだ、という考え方が成り立つわけです。
国会といえども、国民の代弁者たる国会議員の言論の自由を、簡単には奪ってはならない、ということになるのです。

やはり「巧みな」与党

与党は、この二つの問題に着眼したのだと思います。
そこで「与党は(野党6党派とは異なり)、〈議員が国民により選任されていること〉、〈議員には国民の代弁者としての言論の自由があること〉を、しっかりと理解していますよ。だから我々は、軽々に辞職勧告などしませんよ」ということを、国民にアピールしたかったのではないでしょうか?

丸山穂高議員を国会議員として続投させるかどうかは、確かに国民の判断になります。
そして与党としては、丸山穂高議員のことはすでに眼中になく、対野党戦略を考えていた、ということなのかもしれません。

だとすると、与党にも「辞職勧告決議案」への協力を呼び掛けてしまった日本維新の会は、政治的手腕において、まだまだ与党には及ばない、ということになってしまうのかもしれません。

いや、更に深読みすると、もしかしたらこの「場外戦」は先に日本維新の会が与党に仕掛けたものなのかもしれません。丸山穂高議員の失言に対し、与党の協力も得て「議員辞職勧告決議案」が成立すれば、今後、「議員の失言」=「議員辞職勧告決議案」という流れをつくることができるかもしれません。
常々発言が注目されるのは、野党よりも圧倒的に与党です。注目される発言が多い分だけ、その失言が取り沙汰される可能性も割合的に与党の方が高くなるでしょう。
つまり、今回の事案で与党賛成の上「議員辞職勧告決議案」が成立すれば、今後、与党議員に失言があった際、「この前の丸山穂高議員の際もあなた達は議員辞職勧告決議案に賛成したのだから、今回の身内与党議員の失言に対しても、当然議員辞職勧告決議案を通すべきだろう!」と詰め寄ることができるわけです。
日本維新の会は、これを狙ったのではないでしょうか?
しかし、与党はこの策を見破り、「譴責決議案」で野党を返り討ちにした、というわけです。


まあどちらにせよ、その是非はともかくとして、今回の「譴責(けんせき)決議案」で、「野党は与党にしてやられてしまった」、ということになりそうです。

・・もしもこの深読みが正しければ、政治的駆け引きって、なかなか泥臭くて、こわいものですねえ・・
そんなことを、私は思った次第です。
皆さんは、如何お考えになりますでしょうか?

というわけで、以上、丸山穂高議員への「譴責決議案」と「辞職勧告決議案」って、なんでしょう? でした!
ここまでお付き合いを頂きまして、誠にありがとうございました!!