「債権者保護手続」のこわ~いお話!②(有価証券報告書提出会社の場合の注意点!)
【要約:有価証券報告書提出会社が決算日後定時総会までの間に債権者保護手続きを行う場合、公告等の内容が通常と異なることがあります!要注意です!】
【この記事の対象(特に読んで欲しいひと):司法書士事務所の人/法務に関わる人/法律に興味がある人】
債権者保護手続き。
資本減少や合併などをする場合に必要となる手続きですね。
1.公告・催告内容としての「計算書類に関する事項」とは
たとえば、資本金の額の減少をするために行う公告・催告は、
少なくとも、次の内容が入っていなければなりません。
(会社法449条2項)
①資本金等の額の減少の内容
②会社計算規則152条に定める計算書類に関する事項
③債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨
①については、つまり減資する金額ですね。
資本金1000万円のところ、
資本金を200万円減資して資本金800万円にしよう、
という場合には、
「資本金の額を200万円減少する」
などと入れます。
②はちょっと置いておいて、
③については、
「債権者は一定期間(1か月以上!)内に異議を述べることができる」
ということを、公告または催告のなかに入れます。
今回の重要ポイントは、②なんです。
会社計算規則152条に定める計算書類に関する事項。
会社計算規則152条は、なが~い条文ですので、
読むのが大変です。
でも、とっても重要な条文ですので、
しっかりと目を通しましょう!
端折って簡単に言ってしまうと、
(1)債権者保護のための公告または催告をする前に、最終の貸借対照表、またはその要旨を、会社の公告方法に基づいて、
ⅰ官報公告/ⅱ日刊新聞公告/ⅲ電子公告 している場合は、
ⅰ「官報の日付とページ」/ⅱ「日刊新聞の名称と日付とページ」/ⅲ「電子公告を行うウェブページのアドレス」 を公告及び催告の内容とする
(2)最終の貸借対照表について決算公告に代わる電磁的措置をとっている場合は、
「そのウェブページのアドレス」 を公告及び催告の内容とする
(3)有価証券報告書提出会社で最終の有価証券報告書を提出している場合は、
「その旨」 を公告及び催告の内容とする
(4)特例有限会社であるため決算公告義務が課されないときは
「その旨」 を公告及び催告の内容とする
(5)公告する会社に最終の事業年度がないときは
「その旨」 を公告及び催告の内容とする
(6)上記の(1)~(6)以外の場合(会社が決算公告をしていない場合など)は
「最終の貸借対照表の要旨」 を公告及び催告の内容とする
という感じでしょうか(読みにくい! すみません、簡単になってない・・)
具体例を挙げてみましょう!
債権者保護手続きをする前に、登記された会社の公告方法に基づいて官報で決算公告(最終の貸借対照表の要旨を公告)している場合は、
債権者保護の公告または催告に、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
掲載紙 官報
掲載の日時 平成●年●月●日
掲載頁 ●●頁(号外第●号) 」
といった内容を入れます。
もしも、債権者保護手続きをする前に、登記された会社の公告方法に基づいて電子公告で決算公告している場合は、
債権者保護の公告または催告に、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
http://www.●●●● 」
といった内容を入れます。
有価証券報告書提出会社で最終の有価証券報告書を提出している場合は、
債権者保護の公告または催告に、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
証券取引法による有価証券報告書提出済。 」
といった内容を入れますね。
特例有限会社であるため決算公告義務が課されない場合は、
債権者保護の公告または催告に、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
計算書類の公告義務はありません。 」
といった内容が入り、
公告する会社に最終の事業年度がないときは、
債権者保護の公告または催告に、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
確定した最終事業年度はありません。 」
といった内容が入るわけです。
合併の場合の債権者保護手続きの公告・催告についても、
似たような作りになっています。
条文を確認してみて頂ければと思います。
消滅会社の債権者保護公告・催告:会社法789条2項
存続会社の債権者保護公告・催告:会社法799条2項
2.有価証券報告書提出会社の債権者保護手続きの場合
はい、やっとこの記事のメインのお話です!
今回は、「有価証券報告書提出会社」が債権者保護手続としての公告・催告をする場合のこわ~いお話なんです!
え?有価証券報告書提出会社の場合は、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
証券取引法による有価証券報告書提出済。 」
とすればいいんでしょ?
ちょー簡単でしょ?
とお答えの皆様、はい、原則はそのとおりなんです。
ところが・・・
もしもその有価証券報告書提出会社が、
「決算日」以降「定時総会開催」までに債権者保護公告をする場合には、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
証券取引法による有価証券報告書提出済。」
だと、
ダメー!
ということが、あるんです!!(こわ~!!)
つまり、より正確にいいますと、
決算日後、有価証券報告書提出会社が有価証券報告書を提出し、
それを閲覧できる状態になるまでの間に、
債権者保護手続き公告をする場合には、
今期の最終の貸借対照表情報を、
債権者保護手続き公告と一緒に官報に掲載しなければならないのです!
たとえば、
〈ケースA〉
決算日:3月31日
決算に関する取締役会:5月10日
有価証券報告書の提出:5月15日
債権者保護手続き公告:6月25日
定時総会:6月29日
有価証券報告書の閲覧可能日:6月30日
→債権者保護手続き公告と一緒に貸借対照表情報を官報に掲載しなければダメ!
〈ケースB〉
決算日:3月31日
決算に関する取締役会:5月10日
有価証券報告書の提出:5月15日
有価証券報告書の閲覧可能日:6月20日
債権者保護手続き公告:6月25日
定時総会:6月29日
→公告等に、
「なお、最終の貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
証券取引法による有価証券報告書提出済。 」
を入れればOK。
ということなんです。
ですので、
有価証券報告書提出会社が、
「決算日」以降「定時総会開催」までに
債権者保護手続き公告をする場合には、
ちょっとご注意頂ければと思います。
この場合、その会社さんに、
有価証券報告書の提出はいつになるのか、
有価証券報告書の閲覧可能日はいつか、
を、事前に確認してから、
債権者保護手続きを行って頂ければと思います。
あ~、こわいですねえ~!!
如何でしたか?
これは怖かったですよね?
(え!そうでもない?・・ホントですか?)
以上、債権者保護手続きのこわ~いお話②
「有価証券報告書提出会社の場合」でした!
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ここまで長々とお読みいただきまして、
本当にありがとうございました!